冒険しようぜ
北海道編 2
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スープカレーを忘れ海の幸へ
スープカレーを食うという目的が引き金となって北海道に来たはずだったが、私の心は既に海の幸に支配されていた。

世界を救おうと冒険に出た勇者が、いつのまにか魔王の四天王の一人になってしまっているような感じである。わかりにくい例えではあるが。

小樽駅前である。

小樽も普通に都会で、いまいちつまらない。

前回、会社の出張で来たときにも来ているので、所々見覚えがあった。ちなみに会社の出張で来たときは、打ち合わせの相手がドタキャンして、結局何もせずに、というか遊ぶだけ遊んで東京に戻った。非常に楽しい出張で、年に5,6回くらいあればいいのにと思ったが、特にその後、楽しい出張はなかった。

バスに乗って、天狗山ロープウェイに乗りに行く。ここは冬になるとスキー客でにぎわうけど、夏に行っても特にこれといったものがないという名所である。

高いところに登るのが観光だと思っている私たちは、晩飯までの暇つぶしに行ってみることにしたのである。小樽からバスに乗れば着く。


着いた。

バス停は高台にあって、小樽の町を見渡せる場所だった。んー、背の高い人なら見渡せるんじゃないかな。景色はまあまあ良かった。

ロープウェイに乗る。


ロープウェイは2台あって、一台がふもとに居る間、もう一台は頂上である。

こんな夏に用も無いのに乗りに来るやつなんざいねえよとでも言うように、ロープウェイ代金は半額だった。

冬ならばスキーのコースになっているはずの斜面を眺めながら、ロープウェイは頂上を目指す。

「あのへん、上級者コースじゃないのか」
「いやいや、コース外だろう。あんなところ、人間業では降りられない」

自らのスキー技術を棚に上げ、偉そうなことを言っている私たちであった。


頂上付近。小樽の、港付近が見渡せるような感じだ。

頂上には、レストハウス、出店、シマリスと遊ぼうコーナー、斜面から滑り降りてみようコーナー、天狗コーナーなどがあった。


展望台付近。

さすがに見晴らしはいい。Mえだ氏はホンモノのカメラで写真を撮りまくっていた。私も負けずに、携帯についてるデジカメで写真を撮る。

上の方から町を眺めると、なんだか偉くなったような気がして楽しい。


そして、巨大な天狗。

みんなして鼻の先っちょを触るものだから、その部分だけてかてかだ。


私も触っておいた。

ぐわしっ。ぬうっ、で、でかい!

シマリスコーナーでは、子供たちがうさぎやリスをおいかけまわして遊んでいた。リスもあれはあれで大変だ。斜面から滑り落ちる、いや、滑り降りるコーナーは発見できなかった。ダンボール紙でも尻の下に敷いて斜面を滑るんだろうか。

そんな怖いことは遠慮したいので、特に探さなかった。


天狗館。

神話っぽい像があったり、昔のスキーが飾ってあったりした。他には怖いぐらい天狗の面が飾られてた。


どれもこれも、皆邪悪な顔をしていて、カラス天狗っぽいのも一緒くたに飾られていた。

夜中に見たくない、恐ろしい部屋である。


くまの剥製が飾ってあるレストコーナーでビールを飲む。

窓には虫がいっぱいたかってた。巨大なハエとか蚊が窓ガラスに向かってがっつんがっつんぶつかっていた。
Mえだ氏がガムテープを使って虫を捕らえる話をリアルにしたため、シーンとなってしまったりしながらビールを飲み干し、いよいよ小樽の海の幸を食いに行くことになった。


バスで駅周辺まで戻り、すし屋街だか倉庫街だかいう場所を目指して歩く。あちこちに人力車が走っていた。
特にここの店がうまいという知識もない私たちは、フィーリングで店を決める。

居酒屋風の店を見つけ、うに丼があったのでそこに決定だ。入店。

ビールと、うに丼を注文する。ちょっとおかしな組み合わせだ。うに丼はつまみではなく、主食なのである。

どーん!

頼んでないのに、サービスということでホタテのバター焼きが出てくる。テンションが一気にあがる。
北海道に到着して7時間ほど経ったが、今、ようやく私の魂が北海道に到着したという感じであった。

これが北海道の真の力か!

しばらくして、うに丼がやってくる。
厨房に背を向けていた私はわからなかったが、Mえだ氏が短く「あっ」と声を上げた。
「きっ」
「きたきたきたきた」
盆に載せられ、北海道のうに丼が運ばれてきたのである。


ずどーん!

さきほど、ホタテを見て北海道の真の力を感じたが、訂正しよう。
これこそが本当の北海道の力だ。もう、泣けてきた。来て良かったよう。本当に。

生臭さの一片もない、磯の甘い味。口の中で溶けていく大粒のうにに、私は降参した。

もう、どんな秘密でもしゃべる。国家機密でも何でもしゃべる。

至福のときをすごした我々は、口の中にうにの余韻を残したまま、店を去った。私はあまりのうまさに放心状態だったため、サングラスを店に忘れたぐらいだ。店の人があわてて後を追い、届けてくれた。


ようやく魂ともども北海道に到着した我々は、第一日目の夜を迎えるのである。

のんびりと小樽駅方面に歩く。

カギのことを「じょっぴん」と呼ぶ方言が存在することを、商店街の垂れ幕で学んだ。ただ、現在でもそういう方言が使われているかどうかは定かでない。

小樽駅近くの地下に、ドリンクバーのある喫茶店があったので入る。ドリンクバーというのは何かおしゃれなバーということではない。ファミレスなんかにある、セルフサービスでいくらでも飲み物が飲めるメニューのことである。

そこで時間をつぶす。貴重なはずの北海道での時間を、こんな喫茶店でつぶす我々。もったいないけど、一休みしたかったのだからしょうがないのだ。


電車で小樽駅から、札幌に戻ってくる。

今日は、札幌から夜行列車に乗って網走まで移動するのだ。しかし、電車の時間まではまだ3時間以上ある。

ふと、JRタワーに「スカイリゾートスパ」があるのを発見。風呂である。日中、あちこち高いとこに登ったりして汗をかきまくった我々は行ってみることにした。今入らないと、明日の夜まで風呂に入れないのである。これはむさくるしい。

エレベータで22Fまで行って、料金を聞いてみる。2800円。うげぇ、高い。

だが、ここで引くわけにもいくまい。入場だ。

方式は健康ランドと同じような感じで、入り口でロッカーのカギを渡されるので、ロッカーに荷物を入れたら風呂入るなりくつろぐなり好きにしていいみたいだ。

中は、その高料金ゆえに人が少なくて快適だった。我々のような者が来る場所ではない、お金持ちの来る場所なのである。

更衣室のロッカーで服を脱ぎ、風呂へ。だが、入り口でスタッフらしき若い女性がうろうろしていた。床を拭いたりしている。

こんな若い女性がうろついているところに、下半身丸出しで行くのはおかしいのではないか。もしや、ここは水着着用が義務付けられていて、無防備な状態で入ったりすると、警備員に捕まって裸で放り出されるのではないか。

不安は広がり、のんびり服を脱いでいるMえだ氏にその旨を伝える。事態は特に好転しなかった。Mえだ氏も一緒に不安になっただけである。

パンツ一丁で更衣室をうろうろする私。そこに、風呂場からおっさんがあがってきた。ちんちん丸出しで。

私は理解した。

ここは、若い女性の前でちんちんを振り回して歩けるような、お金持ちの大物が来るような場所だったのだ。となれば…私も堂々と行くしかあるまい。心臓がばくばくし始める。

意を決して、風呂場に向かうと、さっきまで居たスタッフの女性は掃除を終えてどこかに行ってしまっていた。

ざんね、いや、ほっとしてかかり湯を浴び、風呂に入る。ひのき風呂、バイブラ風呂、電気風呂、サウナ、ミストサウナなんかがある。人が少なくてのんびりできる。特にミストサウナは、プラスチックのイスに座って夜景を見ることができるようになっていて、なかなかのいい気持ちである。

風呂からあがって、休憩室へ。

館内着みたいなのがあって、楽な服装だ。ここにはリクライニングイスがあって、のんびりできるのだ。私は水をごくごくと飲みたかった。近くにはバーがあって、そこで注文すれば飲み物を持ってきてくれるようだ。メニューには高級喫茶店なみの値段がついた飲み物がずらり。

水だけ下さいって言ったら怒られるだろうか。
そんなことを考えながら、イスでのんびり新聞を読むフリをする。

のどが渇いた。のどが渇いた。のどが。

Mえだ氏にそのことを言うと、サウナの横に冷水機があったという情報が。

再度服を脱いで、サウナ横へ。そこには、駅によくあるようなペダルを踏むと水が、んじょーと出てくるウォータークーラーがあった。飲む。ぬるい。

ぬるい水を飲みながら、私は悲しくなった。私はこんなところでのんびりできる人間ではないのである。居心地が悪いにもほどがある。

結局、もう一休みして、割と早めにその高級スパから出た。

私は駅で、140円のミネラルウォーターを買って飲んだ。うまかった。めちゃめちゃうまかった。泣きそうになった。

近くのコンビニで今夜飲むためのアルコール類やつまみを買い込む。北海道限定とかで、サッポロビールキャラメルとか、塩バターキャラメルとかの悪乗りキャラメルが売っていた。サッポロビールキャラメルは、ビールの味がするようなしないような微妙な味だった。

そして、寝台列車へ。オホーツク何号だったかな、多分、オホーツク9号あたりである。

寝台列車なんて乗るのは何年ぶりだろう。

子供の頃に乗って、寝ながら外を見て、「外は真っ暗だ!すげえ!」などと思っていた記憶がある。子供なので、何か驚きがあるととにかく凄いのである。それぐらいしか表現できないのである。


寝台は、囚人が寝るベッドのようだった。

寝台列車の切符を買うのは私の役目で、無造作にMえだ氏に切符を渡したら、私が上段、Mえだ氏が下段だった。高いところに登るのが嬉しい私は、Mえだ氏がぽつりと「君が上段か…」と言ったのをさらりと流し、「どっちでもいいではないか」とさっさと自分の荷物を上段に上げた。

そして、上段は、登るのが大変で窓も見えなくて、特にこれといって楽しいことがないと判明した。

下段で、軽く酒盛りが始まる。何を話していたか思い出せないが、きっとシモネタだろう。我々はシモネタでつながっているような間柄なのである。

シモネタが尽きたら、多分、つかみ合いの喧嘩をするんじゃないだろうか。

12時近くになり、なかなか寝ない私はMえだ氏に上段に追いやられた。しょうがないので横になる。

通路がわの補助イスを出して、流れる景色を眺めてみようかと思ったが、外は真っ暗で何も見えなかったので、カーテンも閉めて、明かりも消して目を閉じる。次に目を開けると、朝になっていた。

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