今年のはこんな感じだった。

3月13日。そういったイベントに対しては凄く敏感なんじゃないかと
思われる、4X才のIさん(独身)は独り言のように語り始めた。
「そういえば、明日ですよねぇ〜」
視線は、目の前のPCを見つめたままだ。

私は、今日は13日。明日は14日。3月14日。ホワイトデー、という
連想を経て、彼の言いたいことを悟った。

「ホワイトデーですね。なんかお返ししときますかぁ」と私が答えると、
Iさんはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、足元から三越のロゴ入りの
袋を取り出した。
「もう買ってあります。フフフ・・・」
私を含む部署内の男性三人は慌てながらも、
「さっ、さすがIさん!」
「やりますねぇ〜」
「ツ、ツボを押さえてますねぇ〜」

会社帰り、私はどんなものをあげれば良いか考えていた。
キラキラのリボンつきで、いかにも高級そうなものをあげるのは避けたい。
「うわっ、この人、こんな本気のお返しくれたよ〜、あたしは義理なのに。ぷっ」
というリアクションを断固として防ぐためだ。

たまたま近所のスーパーで、日本各地のお菓子セールをやっていたので、
なんだか洋菓子っぽい、1こ100円くらいのを買った。
レジのお姉さんは、肉のパックを入れるようなビニール袋にお菓子5個を入れてくれた。

腐るといけないので、部屋の冷蔵庫にいれる。
ここで恐るべき偶然が。
私が風邪を引いていて、鼻がつまっていたことと、冷蔵庫の中にフタをあけっぱなしで
放置しておいたガーリックバターの存在だ。

次の日の朝、小汚いビニール袋に入ったお菓子をかばんに入れ、会社に向かう。
部署内の事務担当の女性、Yさんはすでに出社していたので、例のお菓子を渡そうと
かばんをあける。風邪が回復して、少々鼻が利くようになった私の顔に、むおっと
にんにくの匂いが!
どうもいやな予感はしていた。

Yさんに袋を差し出しながら、「お返しです、YさんとAさんとで分けてくださいな」と言いながら、
風邪、ガーリックバター、冷蔵庫、にんにくくさくなったビニール袋・・・という連想にたどりつく。
しかし、いまさらどうにもなるまい。
ちなみにAさんは、社長付の事務担当をしている女性だ。YさんとAさんは仲が良い。

YさんはAさんに向かって「AさんAさん!kabukiさんがこれ私たちにって!」と話し掛ける。
そこで第二の試練が。
「えっ、私kabukiさんにはあげてないんだけど・・・」
どうも社長、部長、専務あたりにのみ配っていたようだ。
そ、そうだったかな。しっ、しかし貰ったと思ってました、とかいうのも失礼だと思い、
「いや〜、いつもお世話になってるんで。どうぞどうぞ」
と言っておいた。

しかし、第三の試練が午後一番に襲い掛かる。
部署内の男性によりキラキラのリボンつきで高級そうな箱に包まれた箱がYさんに渡される。
とどめにIさんの「い、いったいいくらするんだ?」というほどの高級感をかもしだしている箱が。
大感激のYさん。

私はその場に居るのがいたたまれなくなり、逃げ出すように外出したのであった。


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