オーストラリアに到着するまでに機内食が2回出たが、大して覚えていない。エコノミーシートだったため、チンして出来上がり、というようなどうでもいい食事であったのに加え、「退屈な移動時間を居眠ってすごす」という私の計画を遂行するため、クッタラスグネルをやったからである。幸い牛にはならなかった。

何故ここで牛が出てくるかわからない人はお父さんかお母さんに聞こう。
お父さん、お母さんが若すぎる場合は、もっと年取った人に聞こう。

オーストラリアに到着した我々の前に待ち受けているのは、入国手続きと税関のはずである。我々に緊張が走った。

旅行目的はサイトシーイング、宿泊先はxxホテル、滞在予定は5日、帰りの旅行券は持っている。これらについては完璧だ。全て英語で答えることが出来る。

まかり間違っても別室に連れて行かれて荷物を暴かれた後、裸にされて調べられるようなことはあるまい。

戦いの炎を目にたぎらせ、私は自信満々に入国手続きゲートに向かった。

そこには「Expressカードを持っている人はこちらへ!(英語)」の表示。

Expressカード。それは、関西空港で渡された一枚のカードで、旅行目的、パスポート番号、生年月日、あやしいことをしているかどうか、を記載するカードだ。

ちなみに「あやしいことをしているか」の欄には12の質問項目があるのだが、チェック欄はなぜか13個あった。不思議なカードだ。

そうか、これも出すのか。パスポートと一緒にExpressカードを係員に渡す。家族3人分だ。さあ、どこからでも質問してくるがいい。係員殿、あなたの攻撃は全て見切っているのだ。どのような質問にもスラスラと答えてみせよう。

だが、特に会話もなくパスポートにスタンプを押され、「いい旅を(英語)」と言われた。そうなのだ。Expressカードは入国ゲートで余計な会話をしなくて済むようにするためのものだったのである!

さらに税関は通らなかった。日本で税関を通っているので、こちらでは不要のようである。

一気に緊張の糸がとけた私は、荷物受け取りの際、犬を連れたおばさんがうろうろしているのにも特に注意を払わなかった。

小柄なかわいい、ブチ模様の子犬。その犬は恐ろしく太った女性とともにあたりをうろついていた。時折、客の荷物をくんくんと嗅ぐ。

そうなのだ。麻薬犬だったのだ。多分。映画やTVでしか見たことのない麻薬犬。麻薬の匂いを覚える為に、麻薬の匂いを嗅ぎすぎて中毒になってしまう麻薬犬。人のために犠牲になる麻薬犬。

そんな悲しい運命を背負った麻薬犬も、空港で単に散歩をしている場違いな犬のようであった。

国際的な犯罪チェックを目の当たりにした私は、「ああ、ここは外国なのだ」という思いをいっぱいに、空港出口に向かった。



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