トトの贈り物

その日、私は「サシでMえだ氏と別れを惜しむ会」のため、色々と準備をしていた。

まず、何らかの餞別を渡すべきであろう。
だが、ここで万年筆などを渡してもちっともおもしろくない。
検討した結果、I先輩の家に遊びに言ったときにガメてきたエッチなビデオ二本を送ることにした。
このビデオは以下のようなやりとりの結果、I先輩からいただいた記念すべき品である。

私「部屋の隅に雑誌の山が出来てますねー。横にはビデオの山ですか。あっ、エッチなビデオがいっぱい!」
I先「なんだよー。いいだろー。いつの間にか溜まっちゃったんだよー」
私「奥さん、xxしませんか、女子高生xx伝説、女教師xx地獄…なんか、趣味がばらばらですね。」
I先「うるせーなー。そんなこといって、実は欲しいんだろー。いいよ、どれでもやるよ。」
私「そうですか。じゃあ・・これとこれ!」
I先「あっ! それはちょっと…他のにしない?」
私「いーえ。これとこれがいいんです」
I先「わかったよ!いいよ!持ってけよ!」

私は心のこもった餞別を、コンビニの袋に無造作につめ、愛用の黒いカバンに入れた。

あとは、酔っ払いの間抜け面、いや、最後の記念に写真撮って変な加工してHPに、でもなくて
最後の思い出を写すためにデジカメもカバンにつめた。
これは翌日気づいたのだが、デジカメを見ると、結局酔っ払いの間抜け面が写っていた。

あとは、財布と携帯電話と煙草とライターなんかを入れ、準備完了。
あとは、これを背負って千葉に向かうだけだ。

ここでトト(飼い猫)が、
「アタシからも餞別だよ」
と言ったかどうか分からない。
が、ふと見ると洗濯してたたんで置いてあったジーンズの上に余計な贈り物を置いといてくれた。
猫ゲロだった。
「な、なんでわざわざここで吐くんじゃああああああっ!」
トトを追い掛け回し、十分怖がらせて罰を与えたあと、ジーンズを水洗いして
洗濯機に放り込む。
洗濯完了のアラームが鳴ったときには、ああ、もう出発しなければならない時間だ。
他にズボンはない。びしょびしょのジーンズをはいていくのか?いやだやだやだ。

そうだ!ちょっと申し訳無いが、遅れると電話しようそうしよう。
が、Mえだ氏は出なかった。どうも外出していて、そのまま私との待ち合わせ場所に行くつもりらしい。
しかも彼は携帯電話を持たない。連絡のつけようがない。
ここでの最良の選択は、「ある程度乾いたところで、我慢してはいて行く」であった。
結局30分ばかり遅れて現地につくと、何故か彼はにこやかに近づいてきた。
何か裏があるのか?と思ったが、そんなことはないだろう。彼の心優しさのなせる技であろう。
彼は居酒屋で私の餞別を快く受け取ってくれた。
私が手渡した途端、それが何かを見抜き、まわりをきょろきょろと確認すると、
目にもとまらぬ早さで自分のカバンに仕舞ってくれたのだった。

こんなモザイクがかかったビデオなど、彼にとっては物足りないかも知れない。
もっとマニアックなものの方が好みだったかも知れない。
たった二本?と思ったかも知れない。
数ある彼のコレクションに、この二本と全く同じものがあったかも知れない。

だが、そんなことは表情には全く出さない彼の姿に感動を覚えつつ、夜遅くまで杯を交わしたのだった。

タイトルから良い話を期待した方…居るのか?…すみません。
Mえだ氏、最後まで変な日記に登場させて申し訳無い。
苦情はメールで受け付けますが、受け付けるだけで何もしない場合がありますので注意してください。
というところで、今回の日記を終わる。


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