白身の恐怖

今日の昼飯は、私の大好きな「さば塩定食」を食べた。
おっさんくさいと笑うなら笑うがいい。
だが、このうまさが分からないようでは、人生の1/287くらいを損していると言っても過言ではないだろう。
とにかくうまいのだ。

さて、そのうまい定食に生卵がついていた。
サービスが良いな。よしよし。
私はテーブルの角で卵をこんこんと叩き、ひびを入れた。
が、叩き具合が甘かったらしく、ほとんどひびが入っていなかった。
面倒なので、強引に親指を押しこんで割ろうとした。それがいけなかった。
「ぐしゃ」という音とともに美しく宙を舞う卵の白身。
美しき白身たちは私の股間付近に付着していた。
ハンカチはない。今朝、会社の机の中に仕舞ったのだ。

こうなったら、とりあえず早く食って会社に戻るしかない。
私は出来うる限りの速度で定食を咀嚼、嚥下する作業を続けた。
すまない…さば塩定食。ゆっくり食ってやれなくて…
食い終わったが、一緒に食事に来ていた上司はまだのんびり食っている。
「早く食えや、このオヤジが!」
と思ったが、ここは茶などを飲みつつ我慢強く待つことにした。
白身が乾き始めているようだ。

上司が食い終わり、ようやく外に出ることができた。
会社へ向かう途中、どっかよその会社の女性社員の視線が、私の股間に集中しているような気がした。
まさかな。気にしすぎ気にしすぎ。
ふと、自分の股間を見た私は驚愕した。
付着した白身はすっかり乾いて、「白いぱりぱり」になっていたのだ。
股間に白いぱりぱり。これはやばい。やばすぎる。

私は会社の玄関を早足で駆け抜け、エレベータに乗って自分の職場に向かった。
あと10mほどで、この忌まわしい「ぱりぱり」ともおさらばだ。
8m…6m…4m。
ゴールは目前、と思われたそのとき、別の上司が私にとどめを刺した。

「…お前、昼休みに何やってきたんだ?」


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