ホテルについてまず思ったこと。それは受付のねえちゃ・・女性がかわいかったことであった。私の頭の中では一瞬、「私と写真を取って下さい」という言葉が英文化されかかったが、家族と一緒であることを思い出し、中断した。 まだまだ朝の早い時間で、チェックインの時間には程遠い。だが、アーリーチェックインという、部屋が空いてれば早めに入れてあげますよ、というありがたいシステムがあるのだった。 この時期、オーストラリアは冬。つまり、全くの季節外れでガラガラであった。 受付の女性自ら部屋に案内してくれるという。部屋は最上階のひとつ下で、見晴らしがよさそうであった。 部屋のドアを空け、圧倒される。 なんだここは。 王宮かっ!? トイレが2つある! シャワーも2つある! こんなところにも部屋が! 現代にタイムスリップした原始人のように、あちこちを探検しまくるkabuki一家であった。 巨大ベッドを発見した私にある衝動が沸いた。そして、その衝動に身を任せる。 巨大ベッドにダイビング!ぼよ〜ん。 王様気分や探検隊気分を一通り満足させた我々は、腹が減ったことに気づく。 この部屋はコンドミニアムと言われるもので、ホテルのようなルームサービスはほとんどないものの、台所関連が充実しており、そのへんで食材を買ってきて自由にお食べなさいな、というものなのだ。冷蔵庫にはデリバリー、つまり出前可能な店への電話番号と、メニューがあった。 そうか。これは私への挑戦状なのだ。電話して出前を取ってみろと。英語教室に通ったのだろう。兄の威厳を示したいのだろう。外人相手に仕事しているのだろう。出来なければお前は負け犬だ。 出前一覧の強烈なプレッシャーに少々ひるんだ。だが、この勝負から逃げ出しては男とは言えまい。私は電話での会話をシミュレーションし始めた。 家族は、久々に会った妹と話を弾ませていた。私一人が場違いな真剣な顔をしていたことだろう。だが、勝負なのだ。やるのだ。 「こちら、xxホテルxxx号室!出前は可能か!?」 「○×○×!##!###(!」 「すまない!もう一度言ってくれるか?」 「#”$#”可能)(#$’!)#・・・」 「可能なのだな?」 「#(’$#)(’可能&”#’&「12時)(&$」 「12時?」 「’(&#可能(&#12時から&#(’」 「12時から可能なのか?」 「そうだ!」 「理解した!後でかけなおす!ありがとう!」 「(’(#$&()ありがとう!」 このとき、私の顔は緊張のため引きつり、心拍数も普段の1.5倍くらいに上がっていたことだろう。 私は、普通に短い会話をしただけのような、普通の顔を必死で作りながら、家族にその旨を伝えた。 オーストラリアに抱かれた日々(5)へ |