私の住む町、中野はうまいと評判のラーメン店が結構あるらしい。

らしい、というのは一度も行ったことがないからだ。

うまいラーメン屋というのは混んでいるイメージがある。
混んでいると、行列に並ばなければならなかったり、隣の人と押し合うような狭いスペースで食わなければならなかったり、どっかのグループと5対1とかで相席しなければならなかったりすることが予想される。
しかもクッタラスグデテイケ的な殺伐とした雰囲気が漂っていそうだ。
どれもこれもイヤだ。

だが、ラーメン屋で一人、餃子とビールを注文する。というのは私の冒険目標でもあるのだ。未知の世界を体験すること。それが冒険なのだ。

とりあえずイキナリ超有名店に行くのはやめよう。
私の近所に「結構うまそうだな…」と思いながらいつも通り過ぎるラーメン屋がある。
ここは少なくとも行列が出来ているのを見たことがない。
ターゲットはここに決めた。

そしてメシ時を外して行くのだ。これならば人は少ないだろう。

行ってみた。

客は誰も居なかった。

どうもワールドカップ効果というか、みんな家でサッカー見るために外食が少なくなっていると聞くが、それだろうか。

少々予想外だが、まあいい。よおし、餃子とビール行くぜ!
と思ったが、餃子がない。ちぃい。帰るか。

いや、それはあまりにも失礼だ。代わりにバラ煮ラーメンとビールを注文した。

そう、ラーメンの具をつまみにビールを飲む作戦だ。
まず、ビールが出てくる。うまい。う、すきっ腹にビール飲んだら早くもいい気分に・・・。そしてラーメンの登場だ。

しょうゆスープに背脂というのだろうか、細かい脂がいっぱい浮いている。そして、バラ煮がずどどんとどんぶりの中に放り込まれている。チンゲン菜も入ってて、ねぎも多めだ。スープを飲む。うめぇ。

バラ煮を少し食う。うめぇ。ビール飲む。うめぇ。ラーメン食う。ビール飲む。スープ飲み干す。腹いっぱい。

他に客が居なかったため、私の背後に回った店主に監視されているような気がしたこと以外は、まったく幸せな時間であった。

昔、埼玉に住んでいたころ、近くのラーメン屋に入ってラーメンは決して注文せず、カレーライスばかり食って、店に「この店はラーメンまずいんだYO!まともなのはカレーライスだけなんだYO!」という無言のプレッシャーを与えていたことを思い出した。
私はようやく、ちゃんとしたラーメン屋に一人で行けるようになったのだ。餃子はないが。

という訳で、まだ「餃子とビール」は達成していない。今回のは小手調べだ。
次回、再度挑戦してみようと思う。


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