例によって出発前に書いたもの。

今回は夏休みにつき、平日の冒険だ。
テーマは『北を目指す。』
中野区から北を目指すとまず埼玉県、さらに進むと群馬県だ。
例によって宿泊ポイントとなる健康ランドをピックアップし、その周りの名所を適当にまわるのだ。

ところで私は毎週どっかにこれといった目的もなく出かけているが、何が楽しいのか考えてみた。
答えはシンプルに、行ったことのないところへ行くのが楽しい、ということだ。

では、いってみよう。
今回は、気力が持てばという条件付きで二泊三日。

まあ、いつもの適当な自転車旅行だ。



出発は木曜の朝10時。なんでそんなゆっくりなのか。私が寝坊したからだ。

今回は群馬県高崎市に行く。
とりあえず私の住む中野区から北西に進めば、埼玉県に入り、いずれは群馬県に到着するはずだ。
目的は、埼玉と群馬の間にある利根川を見て、利根川だあ、と驚くことだ。
あとはまあ、道中の名所らしき物をみて面白がるのも目的としよう。

地図によると高崎線が近くを走っているので、しんどくなったら電車に乗れる。
このいつでも楽できる方式を根性なしスタイルと名付けよう。私の得意技だ。

持ち物は例によって折り畳み自転車ブロンプトン、ハンディGPS、地図、デジカメ、着替え。

出発直後、近くの銀行でお金をおろし、マクドでいつものソーセージエッグマフィンセットを食う。準備オッケーだ。




中野区から北に進むと、練馬区に、そしてやがて板橋区に到着する。

練馬区は何というか、思っていたよりものどかな場所もあったりして、気分がなごんだ。私はのどかな場所が好きだ。

広大な畑とか、大きめの公園とかがあり、住むには良さそうなところだ。家賃とかはきっと高そうだ。




途中、軽いアップダウンがあったりしたが、ここは既に板橋区。しかもあと3キロで埼玉県の入り口、戸田市に着いてしまう。実は既に1時間以上経過しているのだが、私の「時間を短く感じる能力」に感謝しよう。

高崎までは91km。
うむ、そんなとこまで自転車で行くのは無理だ。
普通の自転車乗りなら軽く行けるのかも知れないが、私には絶対無理。

どっかで電車に乗ろう。
そう、こういうところが私が根性なしと呼ばれたり名乗ったりしている由縁だ。




荒川。
綺麗だ。川も綺麗だし、これでいつリタイアしてもいいな、などと気の早いことを考えたりしていた。

それにしても荒川まで結構簡単にたどり着けるなあ。今度、わざわざ昼寝しにこよう。




埼玉県突入。
あとはひたすら国道17号を走っていくだけだ。簡単だ。
ちなみにこの17号は大宮バイパスの17号らしい。よくわからないが、17号が二本あって、そのバイパス側だってことらしい。まあいいか。

戸田は私が以前住んでいたところだ。前に住んでたマンションを探してやろうかと思ったが、国道17号から結構離れていたのでやめた。

そしてここでいつものやつ。そう便意だ。わが友便意。
今回は家を出たときからなんかお腹が痛かったのだが、ここに来て具現化した訳だ。なんだ具現化って。

近くにパチンコ屋があったので入り、釘の状態のいい台を探しているような顔をしてトイレに直行した。
体が軽くなった。




さらに自転車をこぐ。
実にいい天気。歩道も広くてありがたい。

何本飲むんだ、というくらい大量のジュースやお茶を飲みつつ進む。それらが全部汗になって出ていく気がする。もったいないような。

最初に出てくる汗は、なんだかべとっとして臭そうないやな汗だ。しばらくすると、汗の質が変わる。純粋な塩水みたいな、さわやかな汗。

サウナとかに入ると似たような経験が出来ると思う。

さて、相変わらず暑いので何か買う気は全くないのだが、ビクトリアスポーツ店に入った。さんざん涼んでから、やっぱり何も買わずに出た。




国道17号はでっかい道だけあって、ときどき立体交差となり、歩行者および自転車は通るなボケ状態になる。

脇の歩道に入ったら、なんだか薄暗くてどこにも通じてないような狭い道に出てしまった。私の進む道は本当にここでいいのでしょうか、神様。

私は神様を信じている訳ではないので、特に神様からの返事も無い。なんでもいいから進むのだ。




ぼちぼちJR高崎線が国道17号と併走し始める。
北上尾駅近くに、これでいいのか北上尾という文字が。
語呂はいいのだが、そんなことを言われても。

と思いながら駅前のベンチで休憩していると、自転車にのった高校生らしき女の子がスカートを抑えつつ前を通り過ぎた。

ふむ、私、ちょっといやらしい顔でもしてたかな。うへへうへへうへへえ。
まあいいや、出発。




時刻は3時。
そういえば昼飯を食っていない。

桶川市の駅西口公園。ストレートにもほどがある名前のついた公園。
近くにコンビニもあったのでパンとおにぎりとウイダーインゼリーを買って、公園で食う。

もう電車乗ってもいいかなあ、と思ったが、なんとなく「自転車で高崎まで行く」にチャレンジしてみたくなった。
自分の中での挑戦なので、やめても誰に迷惑かけるわけでもない。
ただやるだけではつまらないので、自分の中で勝手に賭けをした。

もし実現出来たら、今後私は、心の中の約束を守り通すことが出来る。
ちょっと賭ける物が大きすぎただろうか。




熊谷市突入!
時刻は午後4時過ぎだ。空には嫌な感じの雨雲が出てきている。

しばらくすると雷が鳴り始めた。

さて、こういう事態のときにやることは何か。

走りながら、いつ雨が降っても避難できるよう、あたりの建物の屋根の大きさなどに気を配ることだ。本当にそれだけでいいのか。




暗雲立ちこめる空。私の前途のようだ。

やがて大粒の雨が降り始めたので、私は屋根のある場所を求めて避難した。
避難先は秩父鉄道石原駅。こっから電車に乗れば、一つ乗り換えをしてゴールの高崎に着くことが出来る。

ごめん、早速リタイアしちゃったよ。でも雨が降ってるんだ。しょうがないんだ。でも多分、雨が降ってなくてもリタイアしたよ。根性なしだから。笑えよ。
何かに心の中でそんなことをいいながら、次の電車の時間を確認する。
30分後だ。

駅の自販機でジュースを買って飲んだ。飲んでいる間に雨はかなり緩くなってきた。

まだ続けられるのか。
私は駅を後にし、国道17号に戻った。




深谷市に突入。
深谷はフカヤで、熊谷はクマガヤ。
フカヤをフカガヤにするか、クマガヤをクマヤにすれば納得も行くのだが。




渋沢栄一という有名人が生まれた場所らしい。
なんだろう、名前の感じでは暴走族のヘッドっぽい。

あとでインターネット検索しようと、とりあえず写真だけ撮った。

今、渋沢栄一を調べてみたが、結局よくわからなかった。
日本で最初にウナギを食った人、とかならわかりやすいのだが。




高崎まで24km。
もう十分射程距離だ。

埼玉最後の都市、本庄市もあと4km先だ。

尻が痛い。絶対、血が出てる。
足がつりそうだ。
手が痛い。握力がない。

そんなときはどうするか。

答えは簡単だ。我慢して進むのだ。




いらっしゃい、本庄市にようこそ!
歩行者も居ないし、私の理性とかも残り少なくなってたので、結構な声で叫んだ。

大丈夫、誰かに聞かれたら知らん顔をして逃げるくらいの準備はある。

それにしても手のひらが痛い。手のひらに汗をかき、ハンドルを握ってるものだから、汗を手のひらに擦り込んでいるような感じになっている。

なめると強烈な塩辛さ。これをおかずにご飯食え、と言われたら食える。

手を洗いたかったが、近くに公園らしき物はなかった。

ペットボトルのお茶を買い、もったいないと思いながらお茶で手を洗う。
少しましになった。2/3ほど残ったお茶はその場で飲んだ。




墓石屋さんも最近は色々ビジネスの範囲を広げているようだ。墓石に混じって、ハム太郎な感じのやつが。

用途はよくわからない。

私にわかることは、結構かわいいなコレ、ということだ。




夜が来たことを伝えたくて写真を撮った。
多分午後7時くらいだ。

あまりそのへんで見かけない、トラック野郎が集う店があった。




川だ。幅はすごく広いのに、水が流れている面積がすごく狭い。
どうなっとるん。




川の名前はかんな川。

かんなぁ〜おまえの愛の灯はまだもえているかい〜、と言ったら、「それは安奈やろ!」と突っ込んで欲しいなあと思いながら、知っている範囲で安奈を歌った。

かんな川は神流川と書き、埼玉と群馬の県境を流れる利根川の上流の川だ。

そう、この川を越えればついに群馬県だ。

私は群馬県に自転車で来たのだ。




標識はカメラのフラッシュが反射して真っ白になってしまっった。
たしか、「こっから群馬」「んでここの地名は新町」とかそんなことが書いてあったと思う。




さらに行くと今度はからす川。利根川の上流は川がいくつかあって、その一つだ。
それはそれでいいのだが、あたりはもう真っ暗。

今夜の宿となる健康ランドまであとどれくらいだろうかと、地図を見た。
うむ、まだまだだ。

健康ランドは高崎にあるのは間違いないのだが、奥の方らしい。




そういえば、腹が減ると動けなくなるハンガーノックという現象があるんだったな。
腹はもちろん減ってる。今回の健康ランドには焼き肉屋があるので、それを楽しみに物を食わずにここまで来たのだ。

だが、このまま何も食わないのは危険な気がした。

数キロおきくらいに点在するコンビニに入り、ウイダーインゼリーと念のためカロリーメイトの小さい方、あとGPSの電池切れに備えて電池を買う。

外に出て、ウイダーでエネルギー補給。ああ、わかる、私の体がエネルギーを吸収しているのが。

自転車を再びこぎ出すと、なんだか体が軽い。そうか、すでにハンガーノックだったか。よかったよ。

右手に真っ暗だけど山かな?という景色を見ながら、ひたすら自転車をこいだ。




私のコクピット、つまり自転車のハンドル部だ。
かばんがとりつけられており、そのうえにマジックテープでハンディGPSが固定されている。さらに、アルミで出来たわっか(カラビナとかいうらしい)で青いタオルをぶら下げている。
左には方位磁石付きのちりん鈴、右手には変速レバーと、しょぼいライト。

なんでいきなりこんな写真を撮る余裕があったのかというと、



健康ランド『千湯』に到着したからだ。

私は自らに課した挑戦をクリアしたのだ。もう、涙が出た。やったよ。ほめてくれよ。

時刻は午後9時前。休憩をのぞくと10時間くらい自転車に乗っていたのだ。
10時間も自転車に乗ってわざわざ健康ランドに行く阿呆、それは私だ。

この感じ、なかなか人にはわかってもらえないだろう。そして、別にわかってもらわなくてもいい。うまく表現できないが、私の心のどっかが非常に満ち足りた感じ。

チェックインし、まずは風呂だ。旅のあかが落ちるとかそんな言葉で表現出来ないくらいの気持ちよさ。
そして焼き肉フロアに移動して、ビール、キムチ、焼き肉だ。
もう、どうにかなっちゃうんじゃないかというくらいうまかった。

これもここにたどり着く苦労を経て、風呂やビールや焼き肉の価値が私の中で最高に高まってこそだ。

断言してもいい。この健康ランドでもっとも風呂を楽しみ、焼き肉を美味しく食べているのは私だ。

知り合いの女性に電話をした。今回は群馬に来ている、ということに対して「ばっかじゃないの〜」という反応を期待していたのだが、「いや、その気持ちはわかるよ」などと言われ、なんか泣けてきてしまった。今日はもう、泣きっぱなし。

健康ランドの設備自体は普通だったが、やけに人が多かった。
家族連れで雑魚寝部屋に泊まる人も居るみたいだ。
いくら安くてもそれはないんじゃないだろうか。私が家族を連れてきたとしても、ビジネスホテルくらいは取ると思う。

休憩スペースは「ここ俺の席」を示すタバコとか、小物が置かれていて、空席はない。パチンコ屋かここは。

が、ここはありがたいことに1000円ほど出すとカプセルルームが使えるのだ。
がらがらだった。カプセルルームに入る。

寝ようとしたらカプセルの中で携帯電話で話を始めた非常識な人が居たので、カプセルの中から「うっさいボケ」と注意して差し上げた。電話は終わった。

私の理性が無くなっているからこその行動と言えよう。そして朝まで目覚めることなく、ゆっくりと寝た。

走行距離120キロくらい

冒険しようぜ(高崎編 後編)へ続く

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