三連休。 一応天気予報は三日とも雨が降らないことになっている。が、一日目はなんとなく昼前まで寝ていたりしてうだうだ過ごした。 なんとなくジーンズメイトに出かけると、サングラスをした小太りのおっさんが、「デーハーでヤベェ服ない?」と女性店員を困らせていた。 ヤベェのはあなたです、とかいう突っ込みもなく、「そうか、デーハーでヤベェのないのか・・・」とおっさんは去っていった。 私は寒さ対策のタイツとかパンツとか、バンダナにも帽子にもなるという筒状の布を衝動買いしたりした。 連休二日目、とにかく外に出ようと折りたたみ自転車に他の装備を積み、駅前のマクドに行った。 最近はどうも、色々予定とかを立てすぎるとだんだんめんどくさくなって結局出かけないみたいな傾向が私の中にできつつあるのだ。 よし、前回パンクで到達できなかった東北への旅を実行してやろう。いくぜ東北リベンジの旅。別に何かに対してリベンジするわけでもないが、それでいこう。 いくつか乗り換えをして、JR常磐線で北を目指す。前回降りた勝田より少し先のオオミカという駅でおりた。漢字で書くと大甕だそうだ。読めない。読めないし、書けない。 オオミカが出たぞ〜と叫んだら誰か突っ込んでほしい。 まあそれはいいのだが、ここまで実に4時間。長時間自転車に乗ったのとは別の感じで尻が痛い。もぞもぞしてしまう。 じゃあ、とりあえず北を目指そう。海が近いみたいなので、見ながら行こう。ちょうど昼だから飯を食おう。 海にまつわるものを食いたい気がしたが、とんかつやがあったのでまあいいかと思って入った。 あまり期待はしてなかったのだが、なんかこうサクサクしてうまかった。前の席の人たちのうち一人が、誰それは仕事の仕方がだめだ。だめだだめだ。とダメ出しをしていた。 ダメ出しをしていた人がトイレに立つと、残った人たちがトイレに行った人はグダグダうるさいというダメ出しを始めた。 ごちそうさま。 海沿いの道は海が見えて楽しいのだが、車がやたら激しく通っていた。 海はいいのだが、なるべく静かな道をとおりたい。私は静かな道を求めてわき道に入った。 入ったつもりだったが、すぐまたもとの道に出てきてしまった。灯台っぽいのが見えていたので写真をとってみた。右のほうにちょこんと写っているのがそうだ。 まあ、しばらく海を見ながら行ってみよう。 砂浜だ。みんな釣りをしたり、子供づれで遊んでたり、のんびりした感じ。潮くささというか海くささというか、そういうにおいが充満していた。 海も充分見たので、海岸線から離れて進む。のどかだ。 いいとこだなあ。 しばらく行くと、今にも倒れそうな長い煙突が見えた。温泉旅館と書いてあり、まあ温泉旅館なんだとは思うが、実は廃屋ですと言われたら、そうなの、と納得してしまいそうな建物があった。 話の種に一回くらいは泊まりにいってみたい気もする。 おばちゃんが畑仕事中。真ん中らへんの白いごまみたいなのがおばちゃんだ。 あんまり見ているとたまねぎとかを投げられそうなのでほどほどにして去った。 今日泊まるところは、なあんとなくいわきの健康ランドと考えていた。そのくせ、健康ランドの電話番号さえ控えていない。 今ある情報は、いわき周辺に健康ランドがあるということだけだ。そんな適当でいいのか。 もはや日も暮れそうな夕方近く。いわきまであと60キロの道路標識が見えた。うむ、そんな距離を走るのは無理だ。 とりあえずは最寄駅まで移動だ。私は迷子属性の大人ではあるが、星の力GPSにより、何の迷いもなく最寄駅にたどり着くことができるのだ。 たまたま駅前に本屋があったので入ってみた。そして、福島県のガイドマップを立ち読みする。 そう、いわきはもう福島県。つまり東北地方なのだ。 見ると、いわき健康センターというのが、紹介記事は載ってないものの、地図上に記載されていた。最寄駅は泉駅らしい。 うん、たしかそんなような名前だったような気がする。 本屋を出て、電車に乗るべく自転車を折りたたむ。通りがかりのおばちゃん二人組がきて「自転車もこんなちっこくなっちゃうんだねぇ〜たまげたねぇ〜」と声をかけてきたので、私は「ええ、電車にも乗せられるですよ」と簡単に説明したりした。 おばちゃんたちはたまげながら去っていった。 準備を終えた私は電車に乗り込み、そして泉駅で降りた。もう真っ暗だ。 ここはもう東北なのですか。ついに東北まで来たですか。 でもまあ、周りも真っ暗だしいまいち実感がわかない。とりあえず本屋で立ち読みした記憶によると駅の東に健康センターはあるはずだ。 ためしにGPSで検索をしてみると、それらしいのがある。国民年金健康センター?うーん、これでいいのかな。まあ行ってみよう。 真っ暗な道を段差とかに気をつけながら進む。GPSのナビ機能により、確実に目的地に向かっているのだが、どうも山というか丘のてっぺんに目的地があるらしい。 無理やり変な細い道に入ると、山道に通じているらしい。 真っ暗な、先がどうなっているかわからない山道をライトで照らす。何かが潜んでそうな暗闇。一度やってみるとわかってもらえると思うが、めちゃくちゃ不気味だ。 振り返って今来た道が無くなってたら泣くだろうなと思った。 振り返った。 道はあったが、めちゃくちゃ早足で脱出した。 このGPSは、目的地の方向を矢印で指すだけのものなので、例えば西からしか入れないような地形だとちょっと考えて進まなければならない。 だが、この暗さでは考えようもない。 なあんとなく、山の上に見える青白く光る無気味な塔が目的地だと思っていたので、勘で道を決めた。 本当は勘じゃなくていける道で比較的広いのをしらみつぶしに行ってやろうと思ったのだが、幸い、一発目でそれらしい道に出たので、私の超感覚によりこの道を見つけたことにしておこう。 それはいいのだが、なんという不気味な道だ。そしてその先にある、青白い塔。魔王が住んでますよ、と言われたら信じてしまいそうだ。 道中、墓があったりして、怖さが倍増した。怖さは関係ないのだが、私の右足がつった。それは運動不足が原因だ。 そして、魔の塔に到着したのだが、どうも目的地はもう少し先らしい。 魔の塔に入れる時間はもう終わっていて、こんなとこには誰も用がないはずだったが、車が数台とまっていた。中にカップルとかが居ないか一台一台確認したい気がしたが、怖い雰囲気だったのでやめておいた。 そしてしばらく進むと、ガラスが湯気でくもっていてそれらしい雰囲気の建物に到着だ。右下の光は魔王の何かではなく、照明だったと思う。 入ってみる。 本日の休憩のみのご利用は終了しました、とカンバンが立っていた。なんか健康ランドっぽくない。 受け付けの女性に宿泊できますか、と聞くと、あいにく満室です。申し訳ありません、と絶対申し訳ないと思ってなさそうな口調で答えが返ってきた。 うむ、ここは健康ランドじゃあないようだ。おかしいな。 今回の試練は泊まる所がないということか。 私は今来た怖い道を戻った。途中、道を間違えてさらに怖いとこに行ってしまいそうになった。 時間は7時ごろ。 まずは電話ボックスを探す。そして、電話帳でビジネスホテルを探した。電話したら空いてるらしいので予約。さらに迷いながらもホテルにたどりついた。 地下の駐車場に自転車を止めてチェックイン。特にこれといって特徴のないシングルの部屋だ。 荷物をおいて、1階がレストランになっているらしいので行ってみた。レストランというか居酒屋「庄屋」だった。まあいいか。 ここでおなかが減ってるときにやる失敗をした。早い話が注文しすぎた。 明らかに1人前ではない巨大なメンチカツやホッケまるごと一匹や大量のサラダなどが運ばれてくる。 うむ、食いすぎだ。居酒屋を去り、ちょっと腹ごなしに近所をうろつくことにした。 ブックオフがあったので入った。立ち読みしまくったあげく、蒼天の拳という北斗の拳の続編みたいなのを買ってホテルに戻った。 まんがを読んで寝る。なんかいまいち遠くに出かけてきている緊張感がないというか、そんなものは最初から無いような気がするが、まあいいか。 朝、6時過ぎに目を覚ます。 外はものすごい霧だった。霧という現象になじみが浅い私は、なんだか嬉しかった。 しばらくすると着ている服がしっとりしてきて、なんだ雨の軽いやつか、ということで飽きた。 昨日、健康センター付近で目をつけておいた市場食堂というとこに行ってみた。 本当にただの食堂で、観光客らしき人はみんなうにいくら丼を注文していたが、私はエビフライ定食を注文した。 うにとかいくらは好きなのだが、なんかこう定番すぎるというか、周りに逆らいたいというか、そんな微妙な気持ちで朝っぱらから脂っこいエビフライ定食を注文したのだ。 エビフライは巨大だった。うまかった。そして、3切れだけ何かの魚の刺身がついていて、これもうまかった。非常に満足して食堂を出た。 外に出ると船からトラックに、とれた魚を移し変える作業をしていた。クレーンのさきっちょに金属の網をつけて、どばーっと移し変えるのだ。 こぼれる魚を狙う海鳥があちこちを飛び回っていた。 さて、なんかもう目的は見失いつつあるというか、そもそもこれといった目的は無かったのだが、このまま帰るのもなんだかもったいない気がしたので、とりあえず東京方面に自転車でだらだら進むことにした。それはつまり帰るってことじゃないのか。 とりあえず適当に方向だけを決めてだらだら進む。行き止まりに迷い込んだりしながらも徐々に進む。ふと、カンバンが目についた。 いわき健康センター。 おかしいな、昨日の場所からはかなり戻っているはずなのに。GPSを作動させながら進んでいるので、激しい迷い方をしているわけでもなさそうだ。 するとこれは。 昨日のとことは同名の施設で、私が当初目指していた健康ランド。 行ってみた。 健康ランドだった。今回は健康ランドの風呂には入れないと思っていたので、ちょっとうれしかった。 チェックインする。風呂に入る。昼間から酒を飲む。 これだ。これが極楽だ。 おっさんならば目いっぱいくつろげそうな空間を満喫した。フロメシネルフロメシネル。 リラックスルームというリクライニング椅子にねっころがってだらだらできる部屋では、おばはんがボリボリと菓子を食いつづけており、神経質そうなおっさんが1分ごとくらいに舌打ちをしていた。 時刻は3時。昨日ホテルでチェックした天気予報によると、今日の3時から夕方までの降水確率は60%。まだ雨は降っていないが、なるほどすごい曇り空だ。 なごり惜しいが、チェックアウトして最寄駅に旅立った。最寄駅はGPSですでに4km以内のとこにあることがわかっている。 まわりの景色を惜しみながら駅に向かった。 最寄駅は「植田」。特にこれといって何かすげえものがある駅ではなかった。 植田の次は勿来、読み方は「なこそ」らしいのだが、私は長いことこれを「もつき」と読んでいた。理由は良くわからない。 電車に乗った時点で私の中での旅は終わる。どっか中途半端なとこで降りてもう少し旅をしてやろうという気もなかった。 雨が降ってきた。雨が降るギリギリのとこで駅に到着して難を逃れたわけか。 帰りも特急を使って短時間で帰ろうというようなことは思いつかず、各駅停車でだらだら帰ってきた。 4時間かかったはずだが、ほとんど眠りながら帰ってきたので苦にはならなかった。 家にたどりついて、座って立ち上がろうとしたら左足がつった。足だけじゃあなく、全身が筋肉痛だった。 そんなに筋肉があるわけでもないのに筋肉痛だった。 まあなにはともあれ健康ランドはやっぱいいな、ということで今回の日記を終わる。 ■福島県 いわき周辺の宿情報 |