私が電話していると、ととっこは不思議そうな顔で見ている。
あまりに長電話だと、ととっこが騒ぎ出す。
私は口のすぐ前に人差し指を立てて、しーっ、と言ってみる。ととっこは、ばりばりと爪を研ぐ。なんだよちくしょう、という訳だ。
ととっこは、こちらを向いているときに声をかけると小さく返事をする。何を聴かれたのかはわかんないけど、まあ義理で返事しておいてやるかという感じである。
通常、部屋の中には私とととっこしか居ないので、私が話しかけたら相手はととっこに決まっている。唯一の例外が電話なのだ。
私は受話器に向かってしゃべってる。ととっこが、それを自分に向かって話しているものと思って、一生懸命返事をする。ととっこが返事をしている間も、私はさらにしゃべる。ととっこ大忙し。
ところが、せっかく返事をしてやってるのに、しーっなどと言われる。これは爪を研ぎたくなるのもわかるというものだ。
さらにしつこく長電話をしているとととっこがあきらめることもある。けど、なんだか心配そうなととっこの声が気になって、ほとんどの場合、途中で電話を切り上げる。
受話器を置いて、ととっこに問う。
「大丈夫か?どっか悪いのか?」
ととっこは顔を洗い始め、私にお尻をくっつけて寝る。とりあえずお尻をくっつけとけば安心、みたいな感じである。万引き防止みたいな態度である。
私はととっこの腹をくすぐったり、鼻をくすぐったり、のどをくすぐったりして、油断させ、そっと離れる。電気を消して、ふとんに入ると、ととっこも入ってくる。じゃあ、おやすみ。
いつものように、ととっこののどの音がぐろろろー、と鳴っているのを聞きながら私は徐々に眠りに落ちていった。
▲もういいから早く寝たいととっこ団長
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