血糖値 猫の糖尿病 症状と治療の基礎知識

血糖値 猫の糖尿病 症状と治療の基礎知識

血糖値 猫の健康管理

猫の血糖値について知っておくべきこと
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正常値の範囲

猫の正常血糖値は約70~150mg/dLです。この範囲を超えると糖尿病などの疾患が疑われます。

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注意すべき症状

多飲多尿、体重減少、歩行異常などが糖尿病の主な症状です。早期発見が治療の鍵となります。

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治療の基本

インスリン投与と適切な食事管理が猫の糖尿病治療の基本です。定期的な血糖値モニタリングも重要です。

血糖値 猫の正常範囲と測定方法

猫の血糖値の正常範囲は約70~150mg/dLとされています。この範囲を超えると、糖尿病などの疾患が疑われる可能性があります。猫は人間と異なり、ストレスによる一時的な血糖値上昇が起こりやすく、病院での検査時には400mg/dLを超えることもあります。このため、正確な診断には複数回の測定や他の検査と組み合わせて判断することが重要です。

 

血糖値の測定方法には、従来の採血による方法と、近年普及しつつある持続的血糖モニタリングシステムがあります。特に「フリースタイルリブレ2」などのデバイスは、猫の皮下に装着して継続的に細胞間質液中のグルコース濃度を測定できるため、ストレスなく家庭で血糖値の変動を観察できるようになりました。

 

このようなモニタリングシステムは、低血糖から高血糖まで広い範囲で測定可能ですが、正常~高血糖範囲では実際の血糖値より低く、低血糖範囲では高く表示される傾向があることが研究で明らかになっています。このような特性を理解した上で使用することが大切です。

 

血糖値 猫の糖尿病の症状と早期発見のポイント

猫の糖尿病の典型的な症状は「多飲多尿」「体重減少」「食欲増加にもかかわらず痩せる」の3つが主なものです。これらの症状は血糖値が上昇し、腎臓の糖再吸収能力を超えたときに尿中に糖が排出されることで起こります。猫の場合、血糖値が200~280mg/dLを超えると尿糖が出現し始めます。

 

また、糖尿病が進行すると特徴的な歩行異常が現れることがあります。「ハックウォーキング」と呼ばれる、踵をつけて歩く独特の歩き方で、これは糖尿病性末梢神経障害によるものです。早期に治療を開始すれば改善する可能性がありますが、長期間放置すると永続的な障害となることもあります。

 

糖尿病の早期発見のためには、以下のポイントに注意しましょう。

  • 飲水量の増加(水飲み場に頻繁に行く)
  • 排尿量の増加(トイレの砂が濡れる量が増える)
  • 体重の変化(定期的に体重を測定する)
  • 毛づやの変化(艶がなくなる)
  • 活動性の低下

特に7歳以上の去勢済みオス猫や肥満傾向のある猫は糖尿病のリスクが高いとされているため、より注意深く観察することが重要です。

 

血糖値 猫の糖尿病の種類と原因

猫の糖尿病は主に2つのタイプに分類されます。

 

  1. インスリン依存型(I型)糖尿病

    膵臓のβ細胞からのインスリン分泌が絶対的に不足している状態です。犬に多く見られるタイプですが、猫では比較的少ないとされています。

     

  2. インスリン非依存型(II型)糖尿病

    インスリンは産生されているものの、細胞がインスリンに対して反応しにくくなる「インスリン抵抗性」が主な原因です。猫の糖尿病の多くはこのタイプに該当します。

     

猫の糖尿病は人の2型糖尿病に近似していると言われており、これは「β細胞へのアミロイドタンパクの沈着によりインスリン分泌障害を引き起こすのが、人と猫のみである」ことや「肉食動物である猫はインスリンの効きが悪い」ことなどが理由とされています。

 

猫の糖尿病の主な原因としては以下が挙げられます。

  • 肥満:過剰な脂肪組織がインスリン抵抗性を引き起こします
  • 高齢:加齢に伴う膵臓機能の低下
  • 不適切な食事:高炭水化物食
  • 遺伝的要因:特定の品種での発症リスクの違い
  • 膵炎などの膵臓疾患
  • 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
  • 甲状腺機能亢進症
  • **薬物(ステロイドなど)の長期使用

特に室内飼いで運動不足の猫や、ドライフードを中心とした高炭水化物の食事を与えられている猫は、糖尿病のリスクが高まります。猫は本来肉食動物であり、炭水化物の代謝能力が限られているため、高炭水化物食は血糖値の上昇を招きやすいのです。

 

血糖値 猫の糖尿病の検査と診断基準

猫の糖尿病を診断するためには、複数の検査を組み合わせて総合的に判断することが重要です。主な検査方法と診断基準は以下の通りです。

 

1. 血液検査(血糖値測定)

  • 空腹時血糖値が繰り返し高値(>250mg/dL)を示す場合、糖尿病が疑われます
  • ただし、猫はストレスによる一時的な高血糖が起こりやすいため、単回の測定だけでは診断できません

2. 尿検査

  • 尿中のグルコース(尿糖)の検出
  • 尿中のケトン体の有無も確認(重症の場合に陽性)

3. フルクトサミン検査

  • 過去1~3週間の平均血糖値を反映する指標
  • 糖尿病の猫における目標値はFRAで300〜400μmol/L
  • ストレスによる一時的な高血糖の影響を受けないため、診断に有用

4. 糖化アルブミン(GA)検査

  • 過去2~3週間の平均血糖値を反映
  • 糖尿病の猫における目標値はGAで20〜25%

5. 血糖曲線

  • 一日を通じた血糖値の変動を測定
  • インスリン治療の効果判定に特に重要
  • 最近では持続血糖モニタリングシステム(CGM)を用いた家庭での測定も可能に

6. 全身検査

  • 膵臓の超音波検査
  • 他の内分泌疾患の検査(甲状腺機能など)
  • 続発性糖尿病の原因となる疾患の検索

診断基準としては、典型的な臨床症状(多飲多尿、体重減少など)に加えて、持続的な高血糖(>250mg/dL)と尿糖の存在が確認された場合に糖尿病と診断されます。また、フルクトサミン値の上昇も診断の補助となります。

 

猫の糖尿病は他の疾患に続発することも多いため、原因となる疾患がないかを確認するための全身検査も重要です。早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、中高齢猫では定期的な健康診断を受けることをお勧めします。

 

血糖値 猫のフリースタイルリブレによる在宅モニタリング

近年、猫の糖尿病管理において革新的な進歩となっているのが「フリースタイルリブレ」などの持続的血糖モニタリングシステム(CGM)です。このシステムは、従来の血糖測定法と比較して多くのメリットをもたらしています。

 

フリースタイルリブレのメリット

  1. ストレスフリーな測定

    従来の方法では病院での採血や自宅での耳や肉球からの採血が必要でしたが、CGMでは一度装着すれば約2週間連続して測定できるため、猫へのストレスが大幅に軽減されます。

     

  2. 継続的なデータ取得

    24時間体制で血糖値の変動を記録できるため、食後の血糖上昇やインスリン投与後の血糖低下など、詳細な血糖パターンを把握できます。

     

  3. 低血糖の早期発見

    インスリン治療中の猫にとって危険な低血糖状態を早期に発見できます。研究によれば、低血糖時には嘔吐などの症状が現れることがあり、これが低血糖の臨床マーカーとなる可能性も示唆されています。

     

使用上の注意点

  1. 測定値の特性を理解する

    フリースタイルリブレは細胞間質液中のグルコース濃度を測定するため、実際の血糖値とは若干の差があります。研究によれば、正常~高血糖範囲では実際の血糖値より低く表示され、低血糖範囲では高く表示される傾向があります。

     

  2. 時間差を考慮する

    血糖値の変動から細胞間質液のグルコース濃度に反映されるまでには時間差があります。特に血糖値が急激に変化する場合や、高齢猫、脱水状態の猫では、この時間差がより長くなる可能性があります。

     

  3. センサーの装着位置と管理

    猫の場合は主に背中や首の後ろなど、自分で引っ掻いたり舐めたりできない場所に装着します。装着部位の毛は事前に刈っておき、センサーが外れないよう保護カバーを使用することもあります。

     

フリースタイルリブレを使用した在宅モニタリングは、獣医師の指導のもとで行うことが重要です。測定データは定期的に獣医師に共有し、インスリン投与量や食事内容の調整に役立てることで、より精密な糖尿病管理が可能になります。

 

猫の糖尿病管理において、このような先進的なモニタリング技術の活用は、治療の質を向上させるだけでなく、飼い主と猫の双方のQOL(生活の質)向上にも大きく貢献しています。

 

血糖値 猫の糖尿病の治療法と食事管理

猫の糖尿病治療の目的は、血糖値の正常化による生活の質(QOL)の改善です。具体的には多飲多尿の消失、体重の増加、毛づやの改善などが治療目標となります。また、猫の糖尿病の特徴として、適切な治療により「寛解」(インスリン注射が不要になる状態)が達成できる可能性があることも重要なポイントです。

 

インスリン療法
猫の糖尿病治療の基本はインスリン注射です。主に使用されるインスリン製剤には以下のようなものがあります。

  • プロタミン亜鉛インスリン(PZI):猫専用のインスリン製剤
  • グラルギン(ランタス®):長時間作用型インスリン
  • デテミル(レベミル®):中間型インスリン

インスリン投与は通常1日2回、12時間おきに行います。投与量は個体差が大きいため、血糖値のモニタリングに基づいて獣医師が調整します。治療目標は血糖値を60~250mg/dLの範囲に維持することです。

 

食事療法
猫の糖尿病管理において、適切な食事は治療成功の鍵となります。猫は肉食動物であり、炭水化物の代謝能力が限られているため、以下のような食事管理が推奨されます。

  1. 低炭水化物食

    猫は炭水化物の代謝が苦手なため、低炭水化物・高タンパク質の食事が血糖値の安定に効果的です。市販の糖尿病用療法食や、獣医師監修の手作り食などがあります。

     

  2. 定時定量給餌

    インスリン投与のタイミングに合わせて、1日2回の定時定量給餌が基本です。食事量とインスリン量のバランスを一定に保つことで、血糖値の変動を最小限に抑えます。

     

  3. 体重管理

    肥満はインスリン抵抗性を悪化させるため、適正体重の維持が重要です。ただし、急激な減量は避け、獣医師の指導のもとでゆっくりと体重を減らしていきます。

     

経口血糖降下薬
人の2型糖尿病では様々な経口血糖降下薬が使用されますが、猫では効果が限定的であることが多いです。特にスルホニル尿素(SU)薬は、β細胞からのインスリン分泌を促進する作用がありますが、長期使用によりβ細胞を疲弊させてしまう可能性があるため、使用には注意が必要です。

 

定期的なモニタリング
治療効果を評価するために、以下のモニタリングが重要です。

  • 血糖値の定期的な測定(血糖曲線の作成)
  • フルクトサミンや糖化アルブミンの測定(長期的な血糖コントロールの指標)
  • 体重の変化
  • 飲水量・排尿量の観察
  • 全身状態の評価

寛解の可能性
猫の糖尿病の特徴として、適切な治療により「寛解」が達成できる可能性があります。特に発症初期の段階で適切な治療を開始した場合、約30~50%の猫で寛解が期待できるとされています。寛解のためには、早期診断・早期治療、適切な食事管理、そして定期的なモニタリングが重要です。

 

猫の糖尿病治療は長期にわたるため、飼い主さんの理解と協力が不可欠です。インスリン注射の手技習得や定期的な通院など、負担に感じることもあるかもしれませんが、適切な治療により猫のQOLを大きく改善できることを理解し、獣医師と協力して治療に取り組むことが大切です。

 

血糖値 猫の低血糖症状と緊急時の対応

インスリン治療中の猫にとって、低血糖は命に関わる緊急事態となる可能性があります。低血糖は通常、血糖値が60mg/dL以下になると発生し、40~50mg/dL以下になると臨床症状が現れ始めます。飼い主さんは低血糖の症状を理解し、適切に対応できるよう準備しておくことが重要です。

 

低血糖の主な症状
低血糖の症状は大きく2つのカテゴリーに分けられます。

  1. 交感神経系の症状(アドレナリン分泌による)
    • 震え、ふるえ
    • 不安、落ち着きのなさ
    • 過敏反応
    • 食欲増進
    • 攻撃性の増加
  2. 神経組織の糖欠乏による症状
    • 虚弱、脱力感
    • ふらつき、歩行困難
    • 行動異常
    • 発作
    • 昏睡

また、研究によれば嘔吐が低血糖の初期症状として現れることもあり、これが低血糖の感度の高い臨床マーカーとなる可能性が示唆されています。

 

低血糖が起こりやすい状況
以下のような状況では低血糖のリスクが高まります。

  • インスリンの過量投与
  • 食事量の減少や食事の拒否
  • 激しい運動後
  • 嘔吐や下痢による食事の消化吸収障害
  • 腎機能の低下(インスリンの排泄遅延)

緊急時の対応方法
低血糖の症状が見られた場合、以下の手順で対応します。

  1. 軽度の低血糖(意識がある場合)
    • 少量の糖分を口から与える(コーンシロップ、はちみつなど)
    • 口の中の粘膜(歯茎など)に糖分を塗る
    • その後、通常の食事を与える
  2. 重度の低血糖(意識がない、発作がある場合)
    • 口からの投与は誤嚥の危険があるため避ける
    • 歯茎や口の粘膜に糖分を塗る(吸収は限られるが試す価値あり)
    • すぐに動物病院に連れて行く(この場合は緊急事態です)

低血糖の予防策
低血糖を予防するための重要なポイントは以下の通りです。

  • インスリン投与量を正確に測定する
  • インスリン投与前に必ず食事を摂取したことを確認する
  • 定期的に血糖値をモニタリングする
  • 食欲不振や