
ストルバイト結石は、猫の尿路系疾患の中でも特に多く見られる結石の一種です。正式名称は「リン酸アンモニウムマグネシウム」と呼ばれ、尿中のマグネシウム、アンモニア、リン酸が結晶化することで形成されます。
猫の尿路結石症は、下部尿路疾患(FLUTD: Feline Lower Urinary Tract Disease)の一種として分類されます。FLUTDには、尿石症のほかに細菌性膀胱炎や特発性膀胱炎なども含まれますが、その中でもストルバイト結石は非常に一般的です。
ストルバイト結石が形成される主な原因は、尿のpH値がアルカリ性に傾くことです。健康な猫の尿pHは通常6.0〜6.5の弱酸性ですが、pH値が6.6以上のアルカリ側に傾くと結晶化しやすくなります。
特に若い猫(1〜5歳)に多く見られる傾向がありますが、どの年齢の猫でも発症する可能性があります。また、ペルシャやアメリカンショートヘアなどの特定の猫種で発症率が高いという報告もありますが、実際にはすべての猫種で起こりうる問題です。
ストルバイト結石による症状は、結石の大きさや位置によって異なりますが、以下のような兆候が見られることが多いです。
特に注目すべきは、猫砂やトイレシートの表面に砂状の結晶が付着し、キラキラと光って見えることがあります。これはストルバイト結晶が尿と一緒に排出されている証拠です。
また、オス猫とメス猫では症状の重症度が異なる場合があります。オス猫は尿道が細長くカーブしているため、結石が詰まりやすく、尿道閉塞を起こすリスクが高くなります。尿道閉塞は24時間以内に対処しないと命に関わる緊急事態となるため、以下の症状が見られた場合は直ちに獣医師の診察を受けるべきです。
メス猫は尿道が比較的太いため完全な尿路閉塞は稀ですが、それでも症状が見られた場合は早めに対処することが重要です。
ストルバイト結石の形成には、尿のpH値が大きく関わっています。猫の尿がアルカリ性に傾くと、ストルバイト結晶が形成されやすくなるのです。では、なぜ尿がアルカリ性になるのでしょうか?
主な原因として以下の要素が挙げられます。
尿のpH値は通常6.0〜6.5の弱酸性が理想的ですが、pH値が6.6以上になるとストルバイト結晶が形成されやすくなります。逆に、pH値が過度に酸性(5.5以下)になると、今度はシュウ酸カルシウム結石というまた別のタイプの結石ができやすくなるため、適切なバランスを保つことが重要です。
ストルバイト結石の治療は、結石の大きさや症状の重症度によって異なりますが、基本的には以下のアプローチが取られます。
1. 食事療法(療法食)
ストルバイト結石の最大の特徴は、適切な食事療法によって溶解できることです。療法食は以下の効果を持っています。
代表的な療法食としては、ヒルズのc/d、ロイヤルカナンのs/o、メディファスの「2種の尿石ケア」などがあります。これらは獣医師の処方のもとで使用する必要があります。
療法食には「溶解用」と「予防用」があり、溶解用は結石を積極的に溶かすための強い効果を持ちますが、長期間の使用には適していません。結石が溶解した後は予防用の療法食に切り替えることが推奨されます。
2. 水分摂取量の増加
水分摂取量を増やすことは、尿を薄め、結晶の形成を防ぐために非常に重要です。
3. 薬物療法
場合によっては、以下の薬物療法が行われることもあります。
4. 外科的治療
大きな結石や、食事療法で溶解しない結石(シュウ酸カルシウム結石など)の場合は、外科的に除去することがあります。ただし、ストルバイト結石の多くは食事療法で溶解するため、まずは内科的治療が試みられます。
療法食を選ぶ際のポイントは、獣医師と相談しながら、愛猫の状態に合った製品を選ぶことです。また、療法食を嫌がる場合は、徐々に混ぜて与えたり、温めたりするなどの工夫も必要です。
ストルバイト結石は再発率が高いため、一度発症した猫は予防策を継続することが重要です。以下に効果的な予防法をご紹介します。
1. 適切な食事管理
2. 水分摂取量の確保
3. 尿のpHモニタリング
4. ストレス軽減
5. 定期健診
これらの予防策を日常的に実践することで、ストルバイト結石の再発リスクを大幅に減らすことができます。特に水分摂取量の確保は最も重要な予防策の一つです。
猫の尿石症には主に2種類あり、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石が全体の90%以上を占めています。この2つの結石は性質や治療法が大きく異なるため、正確な区別が重要です。
ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石の比較
特徴 | ストルバイト結石 | シュウ酸カルシウム結石 |
---|---|---|
構成成分 | マグネシウム、アンモニア、リン酸 | カルシウムとシュウ酸 |
形成されやすいpH | アルカリ性(pH 6.6以上) | 酸性(pH 5.5以下) |
好発年齢 | 若い猫(1〜5歳)に多い | 中高齢猫(7歳以上)に多い |
溶解性 | 食事療法で溶解可能 | 食事療法では溶解しない |
治療法 | 主に食事療法 | 主に外科的除去 |
予防法 | 尿pHを弱酸性に保つ | 尿pHを弱アルカリ性に保つ |
対策の違い
ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石では、予防や治療のアプローチが異なります。
ジレンマと対応策
ここで問題となるのは、一方の結石を予防するための対策が、もう一方の結石のリスクを高める可能性があることです。例えば、ストルバイト結石を予防するために尿pHを酸性に保ちすぎると、シュウ酸カルシウム結石のリスクが高まります。
このジレンマに対応するため、最近では「2種の尿石ケア」を謳った製品も登場しています。これらの製品は。
愛猫がどちらのタイプの結石ができやすいかを知るためには、獣医師による検査と診断が不可欠です。一度発症した結石のタイプに基づいて、適切な予防策を講じることが重要です。
また、どちらのタイプの結石でも共通して有効な対策は「水分摂取量の増加」です。十分な水分摂取は尿を薄め、どのタイプの結石も形成されにくくなります。
メディファスの「2種の尿石ケア」に関する詳細情報
最近では、両方のタイプの結石に配慮した製品も増えていますが、必ず獣医師の指導のもとで使用することをお勧めします。
猫のストルバイト結石は、実は季節によって発症リスクが変動することをご存知でしょうか?特に冬場は注意が必要です。
冬場にストルバイト結石が増加する理由
冬場は気温が下がることで猫の喉の渇きを感じにくくなり、水の摂取量が自然と減少します。水温が低いことも水を飲むことを躊躇させる原因になります。
寒い季節は猫の活動量が減少し、一日中暖かい場所でじっとしていることが多くなります。活動量の低下は代謝の低下につながり、排尿回数の減少を招きます。
冬場は室温が下がることで、特に脱衣所やベランダなど寒い場所に設置されたトイレに行くことを猫が嫌がる場合があります。これにより排尿を我慢し、膀胱内に尿が長時間滞留することで結石形成のリスクが高まります。
室内の暖房使用により空気が乾燥し、猫の全体的な水分バランスに影響を与えることがあります。
冬場の対策
冬場は特にウェットフードの割合を増やし、食事からの水分摂取量を確保しましょう。
加湿器を使用するなどして、適切な湿度(40〜60%)を維持することも間接的に効果があります。
室内でも猫が活発に動けるよう、おもちゃを使った遊びの時間を増やしましょう。
「膀胱炎とストルバイト結石にはおしっこの回数が減ると起こりや