空港の出口に向かうと、そこはもう、完全に外国であった。何しろ、小さな子供が英語をしゃべっているのだ。恐ろしく背の高い男や、信じられないくらい腹の出たおっさん、鼻が曲がるくらいキツイ香水をつけている金髪女性があふれている。 そんな中、妹発見。 オーストラリアに行って4ヶ月。既に外人と化しているかと思ったが、特に変わった様子は無かった。 妹によればホテルまで、送迎バス(有料)で行くとのこと。妹は何の躊躇もなく、インフォーメーションセンターの女性に話し掛けた。 こっ、こいつすげえ!私の薄っぺらな兄のプライドが跡形も無く吹き飛んだ瞬間であった。私ならどうするか。そう、まず頭の中で英会話をシミュレーションするのに最低30秒。行くタイミングを計るのに30秒。合計1分は時間を要すると思われるのだ。 インフォーメーションセンターによると、ここで金を払って、バスの運転手のところで待つようにとのこと。お金を払う。 オーストラリアのお金はおもちゃのようだ。紙幣はすごくカラフルで、小学校でやったギョウチュウ検査に使うような透明フィルムが中央部にある。スカシの代わりなのか。 さて、紹介された運転手。それは、ダーティハリーとかかしを足して2で割ったような男であった。 しばらく待っていると、どうやら出発するようだ。大きなバスを想像していた私の想像は見事に外れた。これは単なる1ボックスカーではないのか。 そしてどうやら、運転手はダーティかかし氏ではないらしい。黒いサングラスの筋肉質の男が現れる。 「Go to heaven!」と言いながら路地裏で乱闘しているのが似合いそうな、なんとなくバイオレンスな感じの人だ。 私の家族と共に、他の旅行者数名がバイオレンスカー(トヨタ製)に乗り込む。 いざ出発。 バイオレンスは運転しながらほとんど携帯で電話をかけていた。電話をかけるときは、もしもし、の代わりにハーイメイト!(やあ、友達!)と言っている。さすがオーストラリアだ。 そして、運転席の横にはバイオレンスのガタイに似合わない、かわいらしいサイズのりんごが置かれていた。車内の匂いけしか、と思っていると、バイオレンスはりんごをつかみ、食い始めた。 彼のおやつだったのだ。 むしゃむしゃ食いながら携帯で電話する。彼の話し声が子守唄のように聞こえたとき、私は眠りについていた。 気がつくと、浜辺が見えている。 どうやら到着したようだ。「サーファーズパラダイス」の看板が見える。 なんてかっこいい地名だ! そして、到着したホテル。それは想像よりもかなり豪華なものだった。 と思ったら、その豪華なホテルの横にすまなさそうに建っている小汚い建物でした、というオチはない。ここなのだ。 私のテンションは急激にあがりつつあった。 オーストラリアに抱かれた日々(4)へ |