電波の入らない、地下鉄通勤でもラジオを聞く方法。元上司のNさんとの会話を思い出しながら説明しよう。
別にこれといった話はないけど、飲みに行きましょうということでやってきた居酒屋。我々は店のメニューの少なさや、つまみの値段の高さにケチをつけながら、アルコールを摂取していた。徐々に、お互いのどうでもいいエピソードを繰り広げはじめる。
「ラジオというのは耳だけで完結する娯楽なのよ!」
ラジオに特に興味のない私は、はあ、とあいまいな返事をしただけだった。何か言ったほうがいいのかなと思い、こんなことを言ってみる。
「うーん、でも、ラジオは映像ないですしねー」
「それがどうしたの!」
意表をついて力強く全身で反論するNさん。私は一瞬ひるんだ。ひるんだ私を見て、しまったと思ったのか、急ににっこりするNさん。ラジオはNさんの大事な部分に位置しているのだ。この件に適当な突込みを入れてはならない。私はそう判断し、聞き手に徹することにする。
小柄なNさんは、私以上に満員電車で不快な思いをしているという。高い位置から吹き降ろされる鼻息、眼前におしつけられるおっさんのわきの下、何故か顔の前に突き出されるおっさんの顔。
そんな不快空間を、MDプレイヤーからMP3プレイヤーに切り替え、音楽で乗り切っている。だが、本当は録音したラジオ番組をmp3プレイヤーで聞きたいという。
なんでそんなにラジオなんかを聴きたいのか。私はやんわり質問してみた。
「へぇー、ラジオってそんなに面白いんですか」
「そう!」
再び力強く語り始めるNさん。最近のテレビはつまらないとか、ラジオならやっぱり伊集院光とか、私にはウッチャンナンチャンのなんとかいう番組がお似合いだとか、そんなことを色々言っていた。
Nさんのラジオに対する愛は深そうだ。特に深夜帯の番組にたいして、ものすごく深そうである。
その深夜のラジオを録音しておいて、朝の通勤時に聞きたいというわけだ。なるほど。
でも、そんなのパソコンがあればそんなに難しくないんじゃないだろうか。ラジオをパソコンのLINE INか何かにつないで録音して、そのあとmp3プレイヤーにコピーすればいいんじゃないだろうか。
「朝の忙しい時間にそんなことやってられないのよ!」
なるほど、もっともだ。録音もタイマーで録音できるように工夫しないといけないしな。そうすると、mp3対応ラジカセかなにかを買えば、タイマー録音くらいついてるだろうし、mp3のファイルをコピーする機能くらいあるんじゃないか。
「そう思って、ググってみたのよ。そしたら…」
Nさんがググッてみたなどという流行り言葉を使ったことに少々たまげた。そして、そんなことはとっくに調べたということに感心した。Nさんは横に細長いメガネをかけているが、ダテではない。関係ないかもしれないが。
「タイマー録音が2件じゃあ、話にならないのよっ!」
タイマー録音が2件じゃあ話にならないへ
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