「タイマー録音が2件じゃあ、話にならないのよっ!」
いつもは賢そうな風貌で冷静に物事をこなすNさんは、すっかり熱くなっていた。酔っ払っているだけかも知れない。
ひといきついて、Nさんは大好きな枝豆を連続で数個食べ、落ち着きを取り戻したようだ。賢そうな顔でこう言った。
「最低でも…10件ね」
「10件も」
10件も何をタイマー録音しようというのか。私はビデオ予約でさえも、2件予約したことなど、1,2回しかない。
そんな私の放心っぷりを無視して、Nさんは続けた。
「深夜…深夜に特に面白い番組が密集しててね。あれをまともに聞いていると…」
「き、聞いていると?」
「寝不足になる」
もっともだ。ところで、なんでこんな話になっているんだったかな。
「ググッてみたら、タイマー録音が何件できるかなんて、どこのメーカーも書いてないのよ。」
そうそう、その話だった。
「ひとつ、あるにはあったんだけど、10万円もするやつで、それはちょっと…と思って」
うん、ラジオに10万円かけるのは私も躊躇する。10万円は、ラジオ道にはまっているNさんでさえ躊躇する金額なのだろう。
「お会計よろしいでしょうか」
店員が割って入ってきた。もう閉店時間である。お金を支払って出た。
駅前で、「じゃっ、私地下鉄なんで。どうもお疲れ様っしたー」と、酔っ払いサラリーマンがよくやる口調で別れた。私もまた、酔っ払いサラリーマンだったのだ。
だが、朝の通勤電車で深夜ラジオを聴くということには、少しだけ興味がわいた。
私は帰宅後、酔っ払った頭でググッてみた。すると…。
あっさり見つかったタイマー録音20件へ
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