うちに、結構な人の出入りがあった頃。
なんかきたー。
そんな顔をして他人を出迎えるととっこ。不思議そうな顔をするものの、あまり警戒はしていない。
初めて来る人間にじゃれたりしている。私としては、私には慣れてるけど他人には冷たいみたいな態度をして欲しかったりして、少し不満を感じていた。
たずねてきた知り合いの、汚れた靴下の先にじゃれ付くととっこ。こら、そんなものにじゃれつくんじゃありません。けど、ととっこは大喜びでその臭い靴下にしがみつくのだった。
そんなある日。
玄関の呼び鈴が鳴り、出てみると小さな女の子が居た。そして、「ねこみせてー」と言っている。
「え？ねこ？」「うん、いるでしょ？」
何かの拍子にうちに猫が居ることを知った近所の子供らしかった。確かに猫はいる。そして見せることも特に問題はない。けど、その女の子が私の部屋に入ることが大問題であった。
この女の子には、猫が見たいからと言って知らないおっさんの家に行くような態度は危険だと知らしめねばなるまい。けど、純粋に猫が見たくて、もう瞳がきらきらしてしまっているその子を説得する自信は私にはなかった。
なんでだめなのー、と言われて正確に回答する自信はない。部屋の中ではととっこが、なんかきたーという顔をしてこちらを見ており、女の子はととっこを見ようと部屋を覗き込む。
私は少し考え、「お母さんに言ってからおいで」と言った。
そう、知らないおっさんの家に遊びに行こうとするわが娘を簡単に許す母親など、この世には居ないのである。多分。
もし来てしまったら、その母親を説教しなくてはなるまい。純真な子供よりは話は通じるはずだ。そこまでの覚悟を決めた私であったが、幸いなことに女の子は来なかった。きっと母親に何言ってんの！と怒られているはずだ。
その後も、主におっさんが私の部屋に訪れ、そのたびになんかきたー、と不思議そうな顔をしながら人間に、正確にはおっさん達に慣れていくととっこなのであった。
▲なんかきたー、という顔のととっこ団長
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