ととっこは、仰向けに寝ている私の胸に乗っかるのが好きである。
だが、そこそこ重さのあるととっこが「おすわり」のポーズで乗ると、ととっこの足がぐりぐりと私の胸やおなかに食い込んで痛い。私が痛がっているのを察してか、ととっこは「ふせ」のポーズになる。痛さが和らぐ。設置面を広くすることで、かかる力が分散するという小難しい効果が働くからである。知ってか知らずか、それとも伏せたほうが楽だからか、結果オーライの大したととっこであった。
この場合、人間とねこの、ほほえましいシーンが想像できるかも知れないが、一つだけどうにかして欲しいことがあった。
「ふせ」は、それはそれでいい。だが、ととっこはいつも尻を私の顔の方に向ける。尻が胸の辺りにきて、ととっこの長いしっぽは私の顔でぱたぱたするのだ。
夏場の暑いときなど、ぱたぱたされた拍子に顔にしっぽの毛がつく。かゆい。めちゃめちゃかゆい。
ととっこの毛は、そう簡単には取れない。顔を洗うしかないのである。しかし、ととっこは気持ち良さそうに寝ているし、いったいどうしたらいいんだ。
しばらくして、ととっこは唐突に私の腹を蹴ってどこかにいく。うわ、暑くなってきたという感じである。私は顔を洗って、さっぱりする。
また、うたた寝して横を向くと、眼前にととっこのお尻があることがある。毛さえ抜けなければふかふかしたいいクッションではあるのだが、やはり顔がかゆくなる。
かゆくなるのだが、安心した顔で寝るととっこを見ているとこれはこれでいいかと、私は再び眠りにつくのである。
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