ととっこは、逃げてしまいそうなものをつかまえることを知っている。
それは例えば、自分のしっぽ。しゅるしゅると不思議な動きをする自分のしっぽは、捕まえておかないとどこかに行ってしまう。だから、寝るときは前足で押さえて、勝手に逃げないようにつかまえる。
ゴキブリ。ゴキブリが出ると、ととっこのハンターの習性が目を覚ます。きゅうっと黒目が拡大し、低い体勢から一気に飛び掛る。ミス。ゴキブリは逃げていく。逃げてしまったものは素直にあきらめるととっこであった。
風に舞う、ほこりの固まり。何かの拍子にそれがととっこの目の前を横切る。ととっこの黒目は拡大し、必殺のストレートを放つ。
ほこりは、ふわりとかわす。力任せでは奴を捕らえることはできないのだ。ほこりが地面にふわりと着地するのを待つととっこ。さすがのほこりも着地してしまっては華麗なディフェンスでかわすことも出来ない。大したととっこであった。
見事ほこりをつかまえたととっこは、がぶりと噛み付く。恐らく、口の中にじゃりじゃりした変な味が広がるのだろう、ととっこはぺっ、と吐き出す。もはや、そのほこりにととっこは興味を示さない。ととっこは勝ったのだ。だが、別のほこりの挑戦はいつでも受ける準備は出来ている。
私の腕。私のひざの上に乗ったととっこは、私の腕を前足でつかまえる。私がどこかに行ってしまわないように、しっかりとつかまえる。やがてととっこが暑くなって別の場所に行くまで、私はずっとつかまえられているのだった。
▲ストーブで暖をとるととっこ団長
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