ととっこは前足を使った力技も覚えていった。
風呂場のドアを開けたりするのである。カギがかかっているとお手上げだが、少しだけ開いてるドアなどは前足でちょいちょいとひっぱり開けて入っていく。入って何をするのかと思うと、おしっこだ。
砂のトイレはおいてあるのだが、何かしらコンディションが気に食わないときは風呂場でする。それはそれで、水で流せば掃除できるため、私としても楽であった。
うちの風呂場はユニットバスで、同じ個室に便器がある。いっそのこと、便器を使っておしっこやらうんこやらしてくれればいいのにと思ったが、さすがにそれは無理だったらしい。
「開ける」を覚えたととっこは、その力を色んなところで試し始めた。力を入れれば開くものはいったいどれなのかを見極めようとしている感じだった。
ある日、私が会社から帰ってくるとととっこの姿が見えなかった。ベランダのガラス戸がちょっとだけ開いてた。
私は、体がかっと熱くなった気がして、部屋の中でととっこを呼ぶ。普段、トトと呼んでもしっぽでしか返事しないととっこだ。私は、「ごはん!ごはん!」と叫び続けた。「ごはん」という単語には、唯一ととっこは声を出して返事するのだ。
部屋の中にむなしく、ごはんごはんという声が響く。
既に外は暗い。ベランダにもととっこの姿はない。
私はTシャツにスーツのスラックスという妙な格好で、1Fまで降り、私のベランダの真下までやってきた。自転車やバイクなどの置き場と化している場所である。ととっこは見つからない。
私は、大きなひそひそ声で、ととっこを呼んだ。もうだめかも知れなかった。
外に出て行ったととっこは、開放された気分で今頃隣町あたりに居るのかもしれない。交通の激しい道路に行ったりしてないだろうか。猫をいじめる変な奴に捕まってないか。
悪いのは私である。私が飼ったりしなければ、もっと広いところでのびのび暮らせたのではないか。ととっこ。ととっこ。ととっこ。
幾度目かの私の呼びかけに、ととっこが答えたような気がした。けど、私は知ってる。現実の世界にはそんなドラマチックな展開はないってことを。何かの聞き違いである。私は明日から、ととっこのことを思い、自分の不注意を呪ってしょんぼりしながら生きていくのだ。
いー。
声のした方を見る。自転車の下から、不安げにこちらを見ているのはまぎれもなくととっこだ。口の少し上からちょっと血が出てるが、ととっこに間違いない。
私はととっこをそーっと捕まえ、部屋に連れ戻した。しばらくの間、ととっこは部屋の隅でじっとしていたが、やがて出てきて猫缶を食べた。
私はととっこの後頭部のにおいをかいだ。獣くさい。ちくしょう、獣くさい。理由はさっぱりわからないが、目の前の風景がゆがんでみえた。猫の後頭部はべしょべしょに濡れた。
濡らしたのは私である。私はこのときから、戸締りをしっかりするという当たり前のことをするようになったのだった。
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