映画「アベンジャーズ」のCG製作クリエイター、山口圭二氏がインタビューで言及していた「ディズニーのCGアニメーション制作における12のルール」というものが気になったので覚書してみたい。
この12のルールは、1981年にディズニーのアニメータがアニメーション技法解説書The Illusion of Life(生命を吹き込む魔法)の中で書いたものなんだそうだ。
▲アニメーションの12のルールを表した動画
また、http://www.3dworldmag.comに、なんとサンプルムービーつきで解説が載っていたのでリンクしておこう。(ただし、解説は全て英語)
原文:http://en.wikipedia.org/wiki/12_basic_principles_of_animation
もっとも重要なルールは「伸縮」させること。
目的は、物体に重さと柔軟性があるように思わせることだ。これは、弾むボールのような単純なものにも、人間の顔の筋肉のような複雑なものにも適用できる。重要な点は、誇張した度合いで伸縮させると、対象にコミカルな印象を与えることができることだ。リアルなアニメーションでは、伸縮の際、物体の体積が変わらないようにすること。跳ねるボールが垂直に伸びたなら、ボールの奥行きまたは水平方向は正しく縮まなければならない。
※ごもっとも。これのない3DCGムービーは「動きが硬い」感じになる。最近のPoserはフィギュアのスケールに合わせて服も変形してくれるオプションがついているので、実現できるかも。
予備動作の目的は、聴衆にアクションの心の準備をさせること。
これをさせることで、動きをグッとリアルにできる。ダンサーはジャンプ前に膝をまげるし、ゴルファーはスイング前にバックスイングをする。このテクニックは、物理的な動作を減らすためにも役立つ。キャラクターがスクリーンの外を見ることで、誰かが来ることや、持ち上げようとしているオブジェクトに聴衆の注意を向けたりできるのだ。
→Anticipation(3Dworld)
※後半はイマイチよくわからない。視線で見てる人の注目点をコントロールする、ということか?
ステージングは映画などで知られる「ステージング」と似ている。ステージングの目的は、聴衆にシーン内で何が最も重要なものかをはっきりさせることだ。
著者のアニメータ二人は「何らかのアイデアを、完璧で間違いようがないほどはっきり伝える表現」と定義した。アイデアとは、アクションだったり、個性だったり、表情だったり、ムードだったりする。これらは、ほとんどの場合キャラクターの配置、光と影の使い方、カメラのアングル・ポジションで決まる。このルールのもっとも重要なことは、何に注目させ、どのディティールを無視させるのか、だ。
→ Stating(3Dworld)
※リンク先のサンプルムービーは「シルエットだけのムービーにして、内容が伝わるか」ということをやっていた。輪郭だけで、何をやっているアニメなのかわかるようなのが、よいステージングの第一歩というところか。あとは、光と影の使い方か。
ものごとの経過を描くのに二つの異なったアプローチがある。一つは、「ストレートアヘッド」。フレームごとに始めから終りまでシーンを描いていく方法だ。一方「ポーズトゥポーズ」は、まずいくつかのキーフレームを決めておいて、それらをあとで補完する方法だ。
「ストレートアヘッド」は、液体やダイナミックな動きの表現などに使われ、リアルアクションのシーケンスを作りだす。しかし、修正が難しく、動きの正確さが求められる。「ポーズトゥポーズ」を使うと、ドラマティック、エモーショナルなシーンでうまくいく。これらのシーンでは、全体の組み合わせがもっとも重要だからだ。これら2つのテクニックは、よく組み合わせて使われる。
コンピュータアニメーションを使うことで「ストレートアヘッド」の問題はなくなった、ポーズ補完はいまだにコンピュータアニメーションで使われる。「組み合わせ」はいまだ重要だからだ。コンピュータに自動的にポーズ間補完をさせると「誤った」シーケンスを作りだしてしまう。このプロセスと他のルールを統合することはいまだに重要だ。
→ Straight ahead action and pose to pose(3Dworld)
※ストレートアヘッドは、教科書の隅に描くパラパラアニメのようなものか。そして、ポーズトゥポーズはアニメの「原画」を先に作ってから、それを補完する「動画」を作るようなもんだな。キーフレームアニメの補完は、自動計算でやると確かにおかしくなる。自然になるよう調整したら、キーフレームだらけになっていることもちょくちょくある。
これらはとてもよく似たテクニックで、動きをよりリアルに描くのに役立つ。キャラクターが物理法則にしたがっているように見せるのだ。
「フォロースルー」は、体から分離された物体(髪の毛など)が、キャラクターの動きが止まったあとも動き続けることを表す。「オーバーラップ」は、体の部位を異なる割合で動かすことだ。(「手」は頭やその他と異なるタイミングで動く)。3つ目のテクニックは「ドラッグ」。キャラクターが動き始めて、数フレーム後、パーツが追い付いてくる。これらのパーツは、服や車のアンテナ、腕や髪などの体の一部など、「アニメーションしない」オブジェクトだ。
さらに、誇張表現でコミカルな効果を生みだし、正確なタイミングでリアルアニメーションを生みだす。
著者の二人のアニメータは、「ムービングホールド」という法則も生み出した。特定のキャラクターが全く動かないように描くのだ。この手法は特にメインアクションで注意を集めたい場合によく使われた。しかし、二人によれば、この手法は「死んだ」アニメーションとなったため、使われなくなった。キャラクターは座っているだけの場合でさえも、呼吸により胴体が伸縮するような動きをするものなのだ。
→ Follow through and overlapping action(3Dworld)
※オーバーラップってのは、動作1が終わる前に動作2が始まるとか、そんな感じのことらしい。また、後半の「ムービングホールド」がよくわからない。そりゃ動きのあるシーンで、ピクリとも動かないやつがいたら違和感あるわ。私の翻訳ミスなのか。ところで「乳揺れ」なんかも、ドラッグと呼ぶんだろうか。かっこいいな。
人間の体とほとんどのオブジェクトの動きは、加速と減速に時間がかかる。そのため、動きの始めと終わりの強調したいポーズをより多く描き、中間には少なめに描くのだ。このルールは、「座る」とか「立ち上がる」アニメーションのほか、ボールが弾むような「アニメーションしない」オブジェクトの移動にも使われる。
→Slow in and slow out(3Dworld)
※初めゆっくり、中すばやく、終わりもゆっくり。この緩急は、なんだか気持良くなる。
ほとんどの自然な動作は、円弧の軌道を描。アニメーションも、このルールに従えばとてもリアルになる。
このルールは、ジョイント回転による関節の動きや、放物線を描いて移動する「投げられた物体」の動きに適用できる。例外は、単純に直線を移動するメカの動きだ。
オブジェクトのスピードと勢いが増加すると、円弧は直線の動きになる。野球だと、速球は他の球種に比べると直線の動きになる。トップスピードに乗ったフィギュアスケートの選手は、ゆっくり動くスケーターほど鋭く曲がれない。ターンするためには、多くの距離が必要となる。
はっきりした理由もなく自然な円弧を描かない動きをする物体は、液体よりも、不規則な動きに見える。
そのため、アニメーションを描く際には、たとえば、ポーズとポーズの間、指の先が自然な円弧を描くようにすべきだ。伝統的なアニメータは、紙に明るく円弧を書き入れておき、リファレンスとして使って、後で消していた。
→Arcs(3Dworld)
※たしかに、動きの軌道がガタガタだと迫力もなにもあったもんじゃない。あったもんじゃないけど、私が作ったアニメーションはよくガタガタになっている。
メインアクションにセカンダリアクションを追加すると、シーンにさらなる生命を与えることができ、メインのアクションがより生きてくる。
たとえば、人間が歩くと同時に手を振ったり、手をポケットに入れたり、喋ったり、口笛を吹いたり、顔で感情を表したりすることができる。重要なのは、セカンダリアクションはメインアクションよりも目立たせようとさせず、メインアクションをより強調させること。たとえばドラマチックな動きの最中に表情を変えても、聴衆には気づいてもらえない。このケースでは、動きの最中よりも動きの始めと終わりにセカンダリアクションを含めるほうがよい。
※髪やスカートがひとの動きに追随することを言っているっぽい。なるほど、動きの少ないところにセカンダリアクションを入れると効果的なんだな。
タイミングとは、アクションが始まるフレームを指す。純粋な物理レベルでは、正しい「タイミング」とは、物理法則に従った物体が、その場にとどまり続けることができなくなったときである。たとえば、物体の重量が、「押される」などの外力によって、どのように反応するか決まった瞬間である。
タイミングはキャラクターの雰囲気、感情、リアクションで決定する。タイミングはまた、キャラクタの個性を伝えるためのツールでもあるのだ。
→Timing(3Dworld)
※上の文章は、言いたいことがさっぱりわからないけども、「間」が重要だよってことを言ってる…ような気がする。
誇張は、カートゥーンの止め絵やコマ数の少ないシーンで良くつかわれる。誇張のレベルは、リアリズムを追求するか、マンガのようなスタイルにするかで決まる。ディズニーでの古い誇張の定義は、「本物を思わせ、それ以上にワイルドで、過激なリアリティ」であった。誇張のもう一つの利点は、物理法則に従ったキャラクタまたは、物語そのものに、超自然または夢のような雰囲気を与えることだ。
誇張を使う際に重要なことは、シーンがいくつかの要素で構成されていたら、それぞれの要素をバランスよく誇張して、見る者を混乱させないことだ。
→Exaggeration(3Dworld)
※伸び、縮み、動作を大げさにする、などのことを言っているっぽい。やりすぎると、見ている人が混乱するということのようだ。
質感を描く、というのは三次元での体積と質量を描くことだ。アニメータには設計のスキルが必要で、3次元の形状、構造、重量、バランス、光と陰などを理解する必要がある。昔のアニメータは、美術を学び、普段からスケッチを行っていた。著者のアニメータ二人は「ツインズを描くな」と警告している。これは、キャラクターの左右が鏡のように同じなキャラクターのことで、「生きていない」ように見える。コンピュータによって三次元の基礎と、コンピュータアニメーションの基礎が学べるため、最近のアニメータは、あまり絵を描かなくなってきている。
→Solid draing(3Dworld)
※説明文の後半が、年寄りの愚痴のようになっているが、リンク先の例だと「重さを意識して各関節を曲げようぜ!」ってことらしい。
アニメキャラクターの自己主張は、役者のカリスマと一致すると言われる。自己主張する必要がないキャラクター、たとえば悪党やモンスターもまた自己主張することができる。重要なことは、キャラクターがリアルで面白いと、見る者が感じることである。
聴衆をひきつけるキャラクター作りのトリックはいくつかある。たとえば好かれるキャラクタは、左右対称または、童顔の顔のキャラクターにする。
複雑または、表情が読みにくい場合は、ポーズの組み合わせやキャラクターデザインで魅力を出す必要があるだろう。
→Appeal(3Dworld)
※キャラクター作りのトリックをもっと書いてくれよと思った。リンク先の例では「卵を割るときポーズをとる」「指についた卵のべとべとを服でふく」などの細かい動きをつけて、「このキャラクタはこういうやつなんですよ!」ということをアピールしてるんだろうな、と思った。
別にディズニーのアニメの動きを目指しているわけじゃなくても、参考になる部分は多そう。たとえば、ステージングの考え方で「シルエットにした時に、何をやっているかわかるか」で、いい構図かどうか判断するってのはわかりやすい。
この12ルールは基礎の基礎でしかないんだろうけども、しっかり覚えておくことにして、今回の覚書を終わる。
関連: