11月の三連休。またしてもMえだ氏とどっか行こうということになっていた。
本当に行き当たりばったりで行くと悲しい思いをする、ということは前回の豊橋旅行で身にしみていた。事前に多少の検討は必要なのだ。
で、今回の旅の目的は「伊勢で伊勢海老を食う」ということになった。
そういう馬鹿らしいコンセプトがあると旅の楽しさも増すというものだ。
さて、伊勢は三重県にあり、Mえだ氏は大阪から車で来るらしい。
とりあえず名古屋まで来てもらって合流し、そっから南下することになった。私は新幹線だ。
Mえだ氏は道路状況が予想以上に良かったとのことで、約束時間の一時間前に到着していたらしい。とりあえず合流成功だ。時刻は昼の12時。
Mえだ氏の愛車、ビュビューン号(今、命名した)で南下する。まずは昼飯を食うのだ。
途中、海鮮料理屋っぽい店があったので入る。
ここの店員が、いきなり「いらっしゃいませ、お二人様でよろしかったでしょうか」と言い出す。
よろしかった・・・って、なんで過去形なんだ。以前から私たち二人を知っているかのような口ぶりだ。
だが、定食はおいしかった。たしか昼膳とか名前のついてる定食で、豪勢な刺身定食という感じだった。
店を出て走り出す。天気はよくなかった。そして、この時点で宿は決まっていなかった。
決まっているのは、とりあえず伊勢まで行くということ。
道中、『津』、『松阪』などの聞き覚えのある場所を通る。伊勢に到着したのは3時をまわっていただろうか。
ここでやっと、コンビニで情報誌をゲットした。適当なホテルに電話をする。
二人部屋が空いてるらしいので予約した。
ここでMえだ氏が、「ベッドがちゃんと二つあるか聞いた方がいいんちゃうん」と言い出した。
私はベッドが1つなのにそれを言わないような馬鹿ホテルもないだろう、と思いながらも再度電話をして確認した。確認の結果、馬鹿ホテルだということがわかり、キャンセルした。
さらに宿を探し、鳥羽の方にある宿を予約。泊まれる上に、晩御飯もちゃんと食わせてくれるらしい。
晩飯のコースを聞かれたので、豪勢なやつを選択した。
宿に到着した頃にはすっかりあたりは暗くなっていた。
チェックイン!最近けちなビジネスホテルしか泊まってない私にとっては、すばらしい部屋だった。旅館!という感じが全体にあふれている。
飯までの間、風呂に入る。
特に汗だくになっているわけでもないが、それなりの距離を旅して入る風呂は気持ちいい。風呂は小さめだったが、満足だった。
部屋に戻り、飯を待つ。浴衣+浴衣の上に羽織るヤツを装着済みだ。気分が出てきた。
しばらくして晩飯が出てきた。
まずは旅館に泊まると出てきそうな普通の料理群だ。特にこれといったものはない。
直後、「大ふなもり」と呼んでもいいような、巨大な刺身盛りが来た。伊勢えびもついている。おぉ、と喜びの声があがった。
配膳が終わり、ビールもついで、戦闘準備完了だ。いただきます。
そこはとんでもない幸せ空間であった。こんな幸せがあっていいのか。
飯の入ったオヒツからどんどん飯をおかわりする。空っぽのオヒツを見て,宿の人がおかわりのオヒツを持ってきてくれた。本当はもう十分だったのだが。
さらに、海老汁とてんぷらが出てきた。
オヒツが再度空っぽになった。さらに、次のオヒツを持ってこられそうになったので、それはさすがに勘弁してもらった。2,3日分食ったような気がしていた。非常に満足だった。
その後、例によってシモネタ話が始まった。
旅館に泊まったらどうせやることもないから10時ごろには寝てるよ、と話をしていたのだが、気が付くともう夜中の12時をまわっていたので寝ることにした。
何時間シモネタでもりあがってるんだ。
まあ、シモネタ以外の話も実はあった。なぜ、食ってすぐ寝ると牛になるかという話だ。
私は牛は反すう(食ったものを一度口に吐き出して噛みなおして食うこと)をする、つまり食ってすぐ寝ると、食ったものが逆流するからやめなさい、ということだと思う、という持論を展開したが、Mえだ氏は特に興味もなさそうだった。
私はそういうことを考えるのが結構好きだ。
朝、Mえだ氏は既に起きていた。私がいびきをかいていたことと、感心するほど気持ちよさそうに寝ていたことを伝えられる。
でもまあ、昔誰かに指摘された、「苦しそうに寝言を言っている」という癖がなくなっただけでもよしとしよう。
また、この写真をとる際に、ちゃんと窓開けて撮ったほうがええんちゃうん!と言われたが、いいんだ、本当の美しい日の出は私の心に写っている。なんてな。
目を覚ますために朝風呂に入りにいった。
朝飯は別室で食うらしい。行くと、昨日の晩飯に比べると貧相な、あまりにも貧相な飯が並べられていた。適当に食って部屋に戻る。
いつものパターンなら、ここで、じゃあ帰ろうかお疲れ様、となることが予想された。
私は今回はそれでもいいような気がしていたが、Mえだ氏のくるま属性が騒ぐのか、もう少しどっかまわろうということに。
チェックアウトして、さらに南へ向かう。この近くに志摩スペイン村があるのか、そうか、と思いながら、特に行きたいとも思わずに通過する。
その先に大王崎というのがあるらしいので見に行くことにした。大王、というスケールの大きそうな名前に期待は少し高まる。だが、車では行けないようなのであきらめる。
なんてあきらめが早いんだ。
で、鳥羽水族館に行くことに。ここにはジュゴンという、昔人魚に間違われた不細工な生き物が居るらしい。写真を見る限り、どうすればこれが人魚に見えるのかは全く理解できないが、とりあえず興味はある。
こんどは北上して、鳥羽水族館を目指す。水族館は家族連れやカップルでいっぱいだった。
男同士で来ているような人は居なかったが、もはや私の感覚では、そんなことを
いちいち気にすることはない。
見たいから来ただけだ。
そして、色んな生き物を見てまわる。
まず興味を引かれたのは、この酸素ボンベを背負った生き物。水槽の中の掃除をしているように見えた。
そして、エイの裏側。エイはやっぱり裏側じゃないとな。
かにだ。めちゃくちゃでっかいかにだ。
このかに一匹でかに鍋が二回くらいできるだろうか。
かと思えば、海の星、ヒトデにまじってちびっこのカニが居た。
全身とげだらけで、喰えるもんなら喰ってみろおらぁ!という雰囲気。
うつぼだ。うつぼは何故かたこつぼに入っていた。うつぼが入る場合はうつぼつぼだろうか。語呂が悪い。
たこが居れば、「てめえ俺の家に入るな!」「うっせえ!喰うぞ!」という喧嘩が見れたかもしれない。
名前は忘れたが顔の大きな魚だ。
居酒屋に行くと、よくこういうおっさんが酔っ払ってクダを巻いている。
これがジュゴン。昔の人が人魚と間違えたジュゴン。
ちょうど白菜をばりばり食っていた。別に歌うでもなく、色っぽいポーズをとるでもなく。
ひげを生やした木こりのおっさんのようなごつい人魚ということであれば、見間違うことも可能かも知れない。
ペリカンだ。どうやって子供作るの?と聞かれたときによく話に登場するペリカン。
そのくちばしは伸び縮みが自在のようで、なるほど子供がここに入ったとしてもおかしくない。
ふと気になってしらべてみると、こうのとりとペリカンは別物らしい。またひとつ賢くなってしまった。
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この生き物は陸上に居た。
最近はカメラつき携帯が多く、みんなして携帯を構えて写真を撮るというなんだか異常な光景があちこちでみられた。
だが、この生き物の写真を撮っているのは私だけだった。
不思議な生き物、オウム貝。
泳ぐことも出来るらしく、水中をただよっているやつもいた。
不思議な生き物その2、カブトガニ。
さすが海の生き物は訳のわからんやつがいっぱいいる。
昔、シリーズものの図鑑を買ってもらって、海の生き物図鑑の深海魚とかを見ては大騒ぎしていた頃を思い出す。
カブトガニは深海魚ではないらしい。
チョウザメだ。ひげが4本あって、細長いもぐらのような顔をしている。
こう見えてもキャビアの親方だそうだ。
屋上に出てちょっと休憩をする。水族館うらの景色。のどかだなぁ。
と、アシカショーが始まることをつげるアナウンスが館内に響く。
当然、見る。Mえだ氏はあまり気乗りしなかったようだが、私は見る気まんまんだ。
内容はまあ普通だった。最後列で見たので、アシカよりも人の頭の方が多く見えた。
目の前のカップルはいちゃつき始めている。カリカリに鋭く削った鉛筆を五本くらい男の尻に突き刺してやりたかった。ああ、腹立つ。
昼頃、水族館を出た。結果としては顔のでかい魚とか、変な生き物をいろいろ見れたので割と楽しかった。
さて、そろそろ昼飯を食って、この旅はフィニッシュだ。Mえだ氏もこのことに異論はないらしい。
昼飯は松阪牛を食おう、ということになった。松阪に入るとステーキハウスの案内がいっぱいある。そのうちの一つに狙いを定めて、道中を進む。
めちゃくちゃ高かったらどうする?昨日の宿より高かったら?あー、それは困るなぁ、あはははは、とのんきな会話をしたりしていた。
ここまでは非常に楽しく過ごせている。これといった失敗もない。
楽しいことばかりだった。
ステーキハウスに入った我々を待ち構えていたのは、8500円〜17000円という恐ろしい範囲でのみ選択が可能なメニューだった。
空気が凍っていくのを感じた。じゃあやめます、と言って店を出るのが難しい状況だ。逃げ道はない。
仕方なく、8500円の1番値段が安いのを注文した。
Mえだ氏の刺すような批判の言葉が私につきささる。わかっている。
ものごとを判断するということは、そういった批判も覚悟するということだ。
ステーキはU字テーブルに我々を含めて5人座り、Uの中にある炭焼き鉄板で肉が焼かれる。
右手には動きのくねくねした、喋り方がイヤミっぽい、いかにも金持ちそうなおばちゃんが、左手には、やはり金持ちそうな老夫婦が座った。
焼き加減を聞かれた。ふつうで、と答えた。余裕があれば、「力強く、それでいてさわやかに焼いて」などと答えたかったのだが、追い込まれた私の精神ではそれはかなわなかった。
肉が焼け、皿の上に盛り付けられる。
うまい。うまいが、8500円も出せばこんだけの味は当たり前だ。
安楽亭なら4回行ける、と10回くらい心の中で繰り返し、食事を終えた。ステーキの食いしん坊なら8回も行ける。くそう。
津のあたりでMえだ氏と別れる予定だったが、なんだか大阪の実家に帰りたくなった。
Mえだ氏も京都の実家に帰るらしい。彼は大阪で一人暮らしをしているが、実家は京都にあるのだった。
実家に電話をしたが、両親は出かけているようで連絡は取れなかった。
結局京都まで送ってもらうことになり、途中でお土産を買った。
伊勢の名物ということで赤福もちを買うつもりだったのだが、見当たらなくて御福もちというバッタものを2つ買った。
京都到着は6時半ごろだ。そっから実家の最寄駅まで電車で移動する。
まだ両親と連絡が取れない。私の脳裏に、旅行中だったら?という考えが浮かんだ。その場合は、駅前のビジネスホテルに泊まろう。悲しすぎるが。
でも、そんなことが起こりませんように。
結局、両親は単なる外出中で無事、会うことが出来た。一泊して次の夜までいたのだが、夜に食わせてもらった一匹70円のさんまのうまさがもう最高だった。松阪事件を思い出すと、なんだか泣けてきた。
おみやげの赤福もどきは、家に居る間に私が自ら一箱の1/3を食ったあげく、もう一箱は持ち帰った。そんなんでいいのか。
そして新幹線で東京に。
道中ひまだったので、赤福好きの知り合いに携帯メールを送ると、新作の駄洒落が送付されてきた。
おみやげに赤福買ったけど、自分で食う、と返事を書いた。うらやましがらせようと思ったのだが、怒られた。
非常に波乱に満ちた旅であった。松坂事件がいずれはいい思い出になることを祈りつつ、日記を終る。