なんとなく海を見に行こうと思った。折りたたみ自転車は電車に乗せられるらしいので、
だめだと思ったら電車に乗って帰ってくればよい。これはいい。
まずは9349というサイトで情報収集。
ここには実際に自転車で行ったと言う無茶な旅の記録がたくさんある。
「なんでそんな無茶な旅したの?!」「いや、なんとなく面白そうだったから」という感じのノリが好きだ。
道路の込み具合を考え、早朝に出発することにする。土曜の4時。そろそろ空が明るくなってきたかな?という時間だ。まだあたりは暗い。
マンションの玄関で、折りたたみ自転車を変形させ、装備品を積む。
自転車にはフロントキャリア(早い話が前につけるかばん)とリアキャリア(早い話が荷台)を装備してある。
呼び鈴というか、ハンドルについてるチリンと鳴る鈴にはコンパスが埋め込まれている。
他、地図、着替えや小型空気入れ、携帯イス、デジカメ、
モンベルというメーカーのすぐ乾くタオル、ハンディGPSを装備した。
ちなみに、モンベルは9349の人が好んで使っているらしいので真似してTシャツとタオルを買ってみた。
ハンディGPSは、星の力で私の迷子属性を解決してくれるというありがたいアイテムだ。
私の住む中野区から、まずは青梅街道(読み方はオウメカイドウ)を西へ。
環七にぶつかったところで南に進む。
空はいつのまにかすっかり明るくなっていて、自動車がぐおんぐおん走っていた。
まずは朝飯を食おう。
近くのコンビニでソーセージパンと甘いパンを買う。飲み物はお茶。ついでに日焼け止めを買った。
さすがに人通りは少なかったが、道端で物を食うのも落ち着かないので公園を探した。ちょっと汚い公園だったが、ベンチもあるしここで食うことにしよう。
もしゃり。もしゃり。
先ほどのパンを食っていると、近くのゴミ箱をからすが荒らしだした。
なんかぐわあぐわあ言っている。
パンを狙われている気がしたのでさっさと食い、
日焼け止めを腕に塗って出発した。
ちょっとビビってる私の動揺が写真に現れている。早い話が、単なる手ぶれだ。
大型の道路なので、歩道を走った。早朝なので人が全く居なくて気持ちがいい。たまに人が居るなと思ったら新聞配達の人だった。
新聞配達の人はスクーターに乗っていたが、歩道を走っていた。
そうか、人が見てないときはスクーターも歩道を走っていいのだなと、一つ賢くなった。(※本当はだめです)
そのうち、国道246(玉川通りというらしい)との交差点にさしかかる。あとはここを南の方にしばらく下っていくことになる。
交通量が多くなってくる。大きな道路だからしょうがないか、と思いつつ進む。
どうもこのへんは渋谷の近くらしい。坂を登ったりおりたりで非常にしんどい。煙草をやめたおかげで、少しは心肺機能が向上していたりするといいのだが。
道中、ふぐ看板を見つけた。営業時間中はわさわさ動いているのだろうか。
渋谷駅周辺には、ふぐ料理を提供する有名な老舗店がいくつかある。その中でも特に目を引くのが、道玄坂上にある「とらふぐ亭」の大きな看板。これだったのか? とらふぐ亭は渋谷の路地裏にある長い歴史を持つふぐ専門店で、道玄坂上の路地に面した店舗には青く光る大きな「ふぐ」の文字の看板が掲げられているのだ。渋谷の名物の一つとして知られているらしい。
渋谷駅前だ。
時間は朝5時すぎだが、こんな時間にも人が多い。早起き…というか今から寝に帰るのだろう。それにしてもこんなとこまで自転車できてしまうなんてなぁ。渋谷の次は日本橋? そんなとこ通るんだったかな?
そういえば、さっきからあまり見てなかった星の力GPS。ちと見てみよう。
・・・。
国道246と環七の交差点、右に曲がるところを左に曲がってしまっていた。1時間のロス。かなりテンションが下がったが、「自転車で渋谷まで行く」というミッションを図らずもクリアしたと思えばいいのだ。そんなことまずしようと思わないけど。
交差点までもどり、正しい道をしばらく走ると羽の生えた黒犬の像があったのでなんとなく写真を撮った。
もうあたりはすっかり明るい。しばらくひたすら道に沿って走り、交差点で信号に引っかかったときに写真を撮った。特にこれといって面白いものは写っていない。
川に差し掛かった。多摩川か?
曇ってはいるが、こういう景色を撮らずに何を撮るんだ、ということで橋の上から一枚。うーむ、良い。
自転車で河原に下りることができるようなので下りた。
ここで携帯イスを取り出し、座る。しまった飲み物がない。
ここには特に書いていないが、非常に頻繁に自販機でペットボトルを買っては飲んでいる。河原に下りるときにはたまたま飲み尽くした状態だったのだ。
もうしばらくこののどかな眺めを楽しみたかったが、喉が渇いていたので自販機を求めて出発した。
この川を越えた時点で神奈川県に入るらしい。自転車で神奈川県まで来たのか私は。
ここで帰ってもいいが、まだ元気が残っていたのでもう少し進んでみることにした。
国道246沿いを進んでいたのだが、途中で自転車が通るには非常に危なそうな道路になったので、少々わき道に入ってぐにゃぐにゃ進む。するとなんか駅にたどりつく。電車が飾ってあったので写真を撮ってみる。
途中、道路標識などを見ながら国道246に復帰。なんでGPSを活用してないのか?それは使いこなせてないからだ。
しばらく走るとあと3kmでマクドナルドの看板。3km先の店を知らせるあたり、間違いなく車向けの広告だ。だが、ありがたく活用させていただく。
そこでソーセージエッグマフィンセット及びアイスコーヒーを食う。あれ、朝飯はさっき公園で食ったし、でもあれから4時間ほど経過してるし、じゃあ今食ってるのは何メシ?まあ、朝飯2でいいか。
自転車にカギをかけるのを忘れたので気になって落ち着いていられず、ぱーっと食って出る。
しばらく走ると「動物飛び出し注意」の看板が。私は都会のごみごみしたところを脱出したのだなぁ、と思った。
看板に描かれているタヌキのような動物は目つきが大変悪かった。私はこの動物に「デスぽんぽこ」と勝手に名づけ、先を急いだ。
登ったり下ったりの道が続く。たまーにロード車というのか、タイヤのほっそい自転車にのった派手な服装の人がすごいスピードで走っていく。私は上り坂は下りて押し、くだりは適当にブレーキをかけながら進んだ。
ここで雨が降ってくる。なんだと!今日の関東は晴れまたは曇りのはずだ。
高架下の広めのスペースに緊急避難。ちょっとラジオを聞いてみよう。
やはり関東は晴れのち曇りとか言っている。
おいおいメッチャ雨降ってるっちゅーねん。
仕方ないので、携帯イスをセットして写真を撮る。カメラのヒモが写ってしまった。しばらくしてからラジオを聞くと、「神奈川の一部では降雨確率50%」と言っていた。
50%という数字って、降るか降らないかわかりません、さようなら、と言ってるように思えてならない。
それにしても雨が降ったのが、このような雨宿りスペース満載の場所でよかった。良かったけど、排気ガスのにおいが充満していた。くさい。
雨が弱まったところで、出発。夜まで土砂降りだったらどうしようかと思った。
しかし、また試練はやってきた。
道路の横の路側帯が非常にせまく、歩道が無い上、大型トラックがどっかんどっかん通る道路に差し掛かってしまった。いやだ、ここを通りたくない。怖い。
ここで星の力GPSの出番だ。GPSは一つわきに入った道を通れば、この先で再び246に合流できることを示している。
しかし、その道は物凄い上り坂だった。
私は自転車を降りて押した。これはもう、ちょっとした山道なんじゃないのか。広大な畑。こやしの匂い。さっきの雨で地面はぬかるみ、自転車はどろどろだ。
とりあえず無事246と合流。歩道も復活していた。
さて、今まで走ってきた国道246とお別れの時が来たようだ。さようなら246。私はこれから国道467を走ります。
467に差し掛かったとき、トイレに行きたくなった。しかもビッグな方。
時間は10時過ぎなので、店は開いているところもある。近くにあるのは家具屋とゴルフ用品店。
ゴルフ用品店に入る。汗だくの体を隠すため、半そでの上着を着たり、帽子をかぶったりした。
開店直後だからか、まだ店員が商品を並べていた。
近くの店員に「いらっしゃいませぇ」と言われつつ、ゴルフなんて全く興味ないのにゴルフウェアを見る振りをし、「あ、そうだトイレ行こう」と今思ったような顔をしてトイレに入った。
三日分かと思われるくらい出た。どこに潜んでいたのか。
ありがとう、ゴルフ用品店。私はゴルフには全く興味ないけど、もし万が一興味を持つようなことがあったら、この系列の店でゴルフボールの一個でも買うよ。とそのときは確かに思っていたのだが、店の名前を忘れた。
身も心も軽くなったところで先に進む。そこでアウトドアショップ発見。
そう、今回の忘れ物の中で致命的なものが一つ。それは雨具だった。これを購入するべく入店。
すげぇ広い。こういう店が近くにあったらなー。
結局、3000円くらいの雨具にもなる上着と、モンベルのTシャツ、虫除けスプレーを買う。結構荷物が増えてしまった。
ラーメン花月発見。にんにくげんこつラーメンとかいうラーメンが結構好きだ。まだ工事中だった。
時期限定でやっている「アジアン汁かけごはん」とかそんな名前の辛い汁がかかったご飯も好きだ。たしか、のび太の好きな食い物も汁かけごはんだ。関係ないが。
道路標識に「江ノ島」という単語が出てくるようになった。江ノ島接近中!もう江ノ島に手が届くところまで来たんだなぁと思うと、かなり痛くなってきた尻にも我慢ができるというもの。
たしか湘南台公園とかいうところ。非常に綺麗な公園で、家族連れがいっぱいいた。
公園にねこ発見。
なかなか堂々としたヤツで、私の正面まで歩いてきてそこで寝ころんだ。
その後、鏡もちのような輪郭の顔のおばさんが猫ぎりぎりを自転車で通り、ヤツはどっかへ行ってしまった。
ごめんネコ、鏡もちには私からよく言っとく。
しばらく行くと「海へのちか道」と書かれた地下道が!
ちかみちなのか、ちかどうなのか。まあ、どっちでもいい。
地下道には自転車も入れるようになっている。地面には砂が落ちている。
やったぞ!
海を見に行くミッション完了!
周りはサーファーばかりで、自転車にサーフボード運搬用のパーツをつけてここまで来ているようだ。
見ていると、鍛え抜かれた男女や、まるで鍛えてなさそうな男女が通り過ぎていく。
湘南の海は汚いという噂だが、本当だった。
波うち際に沿ってごみのラインができている。
あれ、でも何日か前に27時間テレビとかでごみ拾いして綺麗にしてたような気がするな。テレビで映してるとこだけきれいにしたのかな。気のせいかな。
せっかくだからここでのんびりしようと思ったが、また雨が降ってきた。
さて、ここでまず二つの選択肢。帰るかこの辺で泊まるか。
もう尻の痛さも限界だし、電車で帰るのもなんかやだ。
風呂に入って寝たい。では、ビジネスホテルに泊まろう。藤沢市街地まで戻る。
GPSに搭載されている宿泊所検索機能で近くのホテルを検索(位置情報のみわかる。電話番号はわからない)、電話帳で電話番号を調べ、電話する。
結果、「法華クラブ」という怪しげな名前のホテルに泊まることが出来た。名前が変だ。まあいい。
電話したときに、受け付けの女性が「自動車で来られてますか?」と聞くのに、いいえでいいのに「いえ、自転車です」と答えて、軽く吹き出されてしまった。だが、気にしない。
私は自転車で近県をかけめぐる男なのだった。
チェックインをすませ、部屋に入った。ちなみに自転車も折りたたんで袋に入れて部屋までもってった。
部屋に入ってやることは、まず服を全部脱いで備え付けのユニットバスへ。尻にしみる。いったいどういう状態になっているか想像もしたくない。
自転車乗るとき用のパッド入りのパンツを履いていたが、やはりダメージは深刻だ。もう尻を鍛えるしかないように思える。
風呂から上がって尻を天に突き出しエアコンの風にさらした。この姿は誰にも見せたくない。
疲れからか、そのままの体制で4時間ほど寝てしまう。
もう夜の11時だ。腹が減ったので道中買って食わなかったカロリーメイトとホテルの自販機で売っているインスタントチャーハン(自販機がチンしてくれるやつ)を食って、汚れたシャツとかを洗って干して寝た。
朝。尻の痛みはかなりマシになっていたが、パッド入りパンツが乾いてないので自転車に乗って帰るのは無理だ。電車で。
ホテルの正面のマクドでソーセージエッグマフィンを注文する。見ると、マフィンを包んでいる紙が水色だ。
ソーセージエッグは通常緑、水色はソーセージマフィンだ。つまり目玉焼きが入ってない。間違えられたか!しかし、袋を開けるとちゃんとソーセージエッグが入っていた。どうなっとるんだ。
さて、小田急藤沢駅に移動し、自転車を折りたたむ。そして袋に入れる。誰かが見ているかと思ったが、誰も見ていなかった。
折りたたむ自転車が珍しい時代は、2,3年前に終わったのだ。
電車はがらがらだった。ドア横の席に陣取る。
結局、1時間ほどで新宿まで帰ってきたのだ。
行きは10時間もかかったのが帰りが1時間。この旅のスタイル、素晴らしい。
新宿駅を出て自転車を変形させるときも、誰も見てなかった。
新宿に自転車で来たことはないが、私の家まで多分20分くらいだ。
途中、モンベルのリュックを背負い、マウンテンバイクに乗った立派なふくらはぎをした女性の後ろに着く。モンベルねーちゃんと名づける。
どうも私には「とりあえず名づける」という習性があるようだ。
新宿区から中野区へ。そして。
帰ってきた。トータル距離70km。帰りは電車だが。
こうして私の胸に「中野から江ノ島まで折りたたみ自転車で行った」という冒険が刻まれたのだった。
家に帰ると、散らかった部屋でうちのねこがドヘーッっと寝ていた。
法華クラブ
神奈川県藤沢。交通に便利な、ビジネスホテル。