ゴールデンウィークが来た。
今年のは飛び石連休なのだが、そこは有休という技を使って無理やり連休にするのだ。
その結果、4連休をゲットした。
せっかくの4連休だから、どっかに出かけたい。海を見に行きたいと漠然と思っていた。
初日の朝6時ごろ目を覚ますと雨が降っていた。
そうか、天候のことを全く考えてなかった。
さっそくインターネットで検索すると、この4連休は雨は降らないことになっていた。
いやいや、だって現実に降ってるし!天気予報と現実の狭間で苦しんでいると雨があがった。朝10時ごろ。
今日は出鼻をくじかれたというか、けちがついたというか。
出かけるのは明日にしよっと。
連休二日目、空はとても綺麗に晴れていた。
晴れていたが、私の勢いが欠けていた。
そういうわけで、うだうだしてるうちに夕方になってしまった。
そして、三日目、ついに私は旅立つのだ。
ここまでの二日はいわば助走。
助走あってこそ遠くに飛び立てるというものだ。
そういうことにしとこう。
行き先は千葉の九十九里浜、そこの健康ランド「太陽の里」を目指す。
あとは適当に道中で寄り道をしよう。スタート!
今回の装備は、丈の短いズボンに、サンダル、Tシャツに袖の取り外しができる上着。
ぱっと見ると、夏か!という装備だが、前回出かけたときにこれくらいで丁度いいくらい温かいことは確認している。おっさんが近所までたばこを買いに行くような、めちゃくちゃ気楽な服装だった。
あとはミニ空気いれ、折りたたみイス、前回食い残したカロリーメイトとかを持っていった。そうそう、GPSとデジカメも忘れず持っていった。そしていつもの折りたたみ自転車だ。
例によってマクドナルドでソーセージエッグマフィンを食う。
7時30分。地下鉄東西線に乗り、西船橋まで行き、駅を出た。
現地まで結構距離があるが、多少苦労したほうが到着したときの感激が大きい。
これまでの冒険で、私も学習したのだ。
時速何キロくらいで進んで、
距離が何キロあるから何時間で到着するぞ、
とかいう緻密な計算は特に立てていない。
近くを電車が走っているので、つらくなったら電車に乗ろうという計画だ。
まあいつもどおり。
朝9時。西船橋といえばなんだろう。
競馬場があったような気がする。駅周辺は結構ひらけていて、人がいっぱい居た。
そう、今日はカレンダー上では平日なのだ。
ふふふ、今からお仕事ですかふふふ、私は遊びに行きますふふふ。
人が仕事してるときに遊ぶことほど楽しいことはない。そう思うだろう?あなたも。
駅から出て、広いスペースで自転車を冒険モードに変形させる。
GPSもセット。
実は西船橋が、千葉のどこらへんにあるか、この時点で知らなかった。地図を確認する。どうも南東に進めばいつかは九十九里に着きそうだ。
まずは水分補給と行こう。
駅を出発してから10分もたっていないが、まあいい。
のどがかわいたのだ。ペットボトルのお茶を買い、飲む。
飲むとおしっこがしたくなり、近所の公園に寄る。
いつになったら本格的に出発するんだ。
とはいえ、トイレがあれば、とりあえずオシッコを出しておくことは大事なポイント。
怠ると後で大変なことになる。しかたあるまい。
公園に自転車をとめていると、ぐわしゃーん!という音がした。
トイレのドアが自動的に閉まったのだ。
いや、自動的にというか、風にあおられて閉まった。
やめてくれ。私が来たとたんに意思があるかのごとく閉まるのはやめてくれ。
霊的な何かを連想させる物理現象を一切やめてくれ。
中に入ると不気味な落書きがしてあった。だから、そういうのをやめてくれ。さっさと済ませて出た。
さて、まだまだ都会の風景の中、だらだらと自転車をこぐ。
おお、これが競馬場か。朝早いのでまだ準備中のようだ。
私はこれまで一度も競馬をしたことがなく、興味もあまりないので、ふうん、そうか、程度の反応で通り過ぎた。さらば馬たち。
そして向こうに人工スキー場、ザウスが見える。
ザウスってまだ営業してたんだったかな。まあ、ザウスは以前千葉に自転車で来たときも見てるから軽く流しておこう。
そろそろ緑も増えてきていい感じ。自然はいい。
しかしこう思うのも、普段緑のあまりないとこに住んでいるおかげかも知れない。
いつも身近に自然がある人は、当たり前過ぎて何も感じないことだろう。
私は今住んでいるところがあまり好きではないが、そのおかげで自然が好きになったことには感謝しよう。
もう1時間くらいは進んだだろうか。
めちゃくちゃ広い公園があった。カレンダー上は平日なので、誰もいない。
緑の空間を支配しているのは、私だ。
そういえば自転車を撮ってなかった。
後ろに積んであるのは買い物袋で、ここに最低限の着替えやらビニールシートやら、そういうのを積んでいる。
花見川というおめでたい地名。
おめでたいというか風流というか、花見好きな人が集まるだけのところかもしれないが、こういう夢のある地名っていいな。
(※その十年後、そのおめでたい土地に住むことになるとは、思わなかった!)
地名の由来を聞いたら、「川から花が見えるから」とかそういう答えが返ってきて、ああそう、という冷めたリアクションをしてしまいそう。
写真ではわかりにくいが、にわとりがいっぱい飼われていた。
特に手前のにわとりは、せっせと穴を掘っていた。
にわとりが穴を掘る姿なんて滅多に見れないのでじーっと見ていたら、コケーっ!と鳴かれた。逃げた。
川べりに来たので、少し止まって空を見てみる。
ああ、晴れてるなあ。まだまだ都会から脱出できてはいないが、とりあえずいい天気だ。
折りたたみイスを取り出し座る。すでに痛くなってきた尻を休憩させ、回復を図るのだ。サドルの高さを少し調整したりして無駄な抵抗もしてみた。
まあ色々やったとしても最終的には方法はひとつ。我慢して進むのみ。
ひときわ大きな建物、それは千葉県庁らしい。すでにここが何市なのかはわからない。
今後の私の人生において、千葉県庁とかかわることはきっと無いと思うが、雑談とかの最中に千葉県庁が出てきたら、あーっ、知ってる知ってる!と言うことにしよう。
(※十年後、千葉県庁の住所を本籍にしました)
工事中の川を通る。ふと見るとでっかい鯉が、うようよ居た。赤い鯉だ。
元気もいいらしく、時々あちこちで飛び跳ねている。
鯉の泳ぐ川計画とか進行中なのか。
かと思えば、川の細い中州で亀が大量に甲羅干しをしていた。
ぱっと見ると、なんかやけに岩がごつごつしているなあという感じなのだが、その岩が全部亀なのだ。
それはもう、怖いくらい居た。ゾワッとする。
鯉といい亀といい、きっとこの川では面白計画が進んでいるに違いない。
鯉とか亀で第二のたまちゃんを生み出そうという計画かも知れないな。コイちゃんとカメちゃん。
来た。来たぞ。
都会の鎖でがんじがらめになった私の魂を開放する場所が。
見た目ももちろん重要だが、もうひとつ重要なものがある。それはにおいだ。
草とか泥とか、川とか、いろんなにおいをかぎながら私は魂を開放していくのだ。
あかーい道は続くーよーどっこまでも〜。
無常にも3kmくらいで赤い道は終わった。
赤い道の途中で不審な動きをするカップルが居た。二人の行く末を物陰から観察したかったが、まだまだゴールの遠い私は先を急いだ。
空が広い。
ぱっと見た視界の中に、空が大部分を占めているのだ。私の住んでいるあたりは、ぱっと見ると建物が大部分をしめている。
どうせなら、やっぱり空のほうがいい。
さて、ここまでとりあえず南東へ南東へと進んでいたのだが、一応地図を確認することにした。
目的地を通り過ぎていたらどうしようと思ったが、そんなことはなく、まだまだ半分以上ある。
有料道路のわきを走っている小さな道路は舗装状態がよく、自転車で走るのが気持ちよかった。普段の生活では、舗装状態がどうとかあまり気にしないよなあ。
よその家に桜が咲いてたので撮った。桜はすっかり散ったものと思っていたが、こんな立派なのが残っていたとは。
特に前回は、いろんな桜を撮ったにもかかわらず、デジカメのトラブルで画像が全部なくなってしまったので、今回この写真を撮る事ができてうれしかった。
閑静な住宅街ゾーンに突入!閑静だけど、ゆるめの上り坂がひたすら続いていてしんどい。
上り坂は自転車を降りて押す。
そろそろ太ももあたりの筋肉が、ぐわああっ!と悲鳴をあげていた。本当にそんな悲鳴をあげていたら、私も少し楽しいのだが、なんというか足の筋肉がひっくり返りそうだった。
効果音で書くとしたら「ぴくっ、ぴくくっ」「メキャァ!(つった音)」という感じ。
ちょっとでも変な風に力をいれると私の足はつる。つらないように、左右の力の入れ加減を調整しながら、ぺたぺたと自転車を押す私だった。
上り坂が終わったと思ったら急な下り坂だった。今までためたエネルギーが無駄に使われていく。
このあたりからGPSを見ながら進んでいる。坂をおりきったあとに狭そうな道に入ったら、激しい上り坂だった。すごい損した気分。
登りきったあとにはのどかな畑が広がっていた。
私の両ふとももは意志を持つかのごとく、ぴっくぴくとけいれんしていた。やばい。
折りたたみイスを取り出し、少し休憩する。飲み物とかも飲む。
出発した。足のけいれんはとりあえず止まっていた。とりあえず休憩を入れながらいけばまだまだいけそうだ。
ついに九十九里の名を冠する飯屋が!
地図で位置を確認すると、まるで九十九里じゃないのだが、九十九里感があるので許されているのだろう。
とにかく、九十九里を名乗る店にたどり着いたのだ。私は確実に目的地に近づいている。
トイレに寄るためだけの目的で、近くのアウトドアショップに入った。
トイレに直行するのも気がひけたので、特に興味のない、プロテインやら、テニスのラケットやら、野球のグローブやらをふうむふむ、と見たふりをする。
「あっ、そうだトイレに行こう」と急に思いついた小芝居をして、トイレに向かった。
体が軽くなって出てくると、うどん屋に牛のおきものがずらりと並ぶ光景。リアルで不気味だった。
時刻は2時ごろ。おなかもすいたのでデニーズに入る。
大きな国道なので、結構食べるところがあるのだ。
デニーズに入店、おすすめランチを食った。ビシソワーズだっけな、冷たいじゃがいもスープも一緒に頼んだ。うまかった。
勢いのありそうなパソコンショップ100満ボルト。
このパソコンの性能はどのくらい?と聞かれたら、お客さんそりゃあ100満ボルトですよ!わははは!
意味はわからないが、勢いはありそうだ。本当にそんな感じなのか調べるのもめんどうなので、店の前を素通りした。すまない、今日の私の相手は大自然なんだ。
田んぼだ。広い広い田んぼだ。
私は子供のころ、たしかにこういう光景を見ていた。
忘れてしまった何かを思い出すような気がしてくる。何を忘れてしまったのかは思い出せない。
地図を見ると、いつのまにかもう少しで海に出る。しかし、ここから強烈な向かい風が私を襲う。
いいだろう、向かい風ぐらいハンデとしてくれてやるぜ!
写真からは読み取れないと思うが、それはもう激しい向い風だった。
風の音が、びゅごおおぼおおろおおあああ!と聞こえてくる。すいません、さっきのハンデなかったことにしてください。びゅごおおああ!お願いします。ごおおおおああ!くそうもういいよ、ばーかばーか!
私は、筋肉のひっくり返りそうな太ももを気遣いながら少しづつ進んだ。そう、確実に私は進んでいるのだ。この分だと、夕方前には海岸に着くな。
歩道のちょっとした段差を超えたとき、
後輪の後ろで、ずびょろろろろろ!と変な音がした。聞き覚えがある嫌な音だった。
タイヤの空気が抜けたときの音。パンクしたときの音だ。
初パンク。自転車旅行にパンクはつきものということは、情報としては持っていた。自転車旅行をはじめた当初はパンク修理セットも持ち歩いていた。
だが、今回もきっと大丈夫だろうと思って、パンク修理セットは持ってきていない。しまったちくしょー!
一気にテンションが下がった。こんなことなら家で寝てればよかった。こんなとこでパンクしちゃって、どうするんだ。
しかし、すぐに別の考えが浮かんだ。この旅のリーダーは私。
何かがあったら、私がなんとかするしかないのだ。
パンクが起こってどうするか?どうにか修理して前に進むのだ。
具体案は何もない。ここいらは田んぼしかないし、とりあえず自転車を押しながら進んで行こう。無理やり乗るとタイヤチューブが破れたりして、取り返しがつかなくなりそうだ。
ぺたぺたとサンダルの音が道路に響く。さて、どうするか。
タクシー…は通りそうにないし、自転車屋もなさそうだ。お、バス停があるな。
よし、最悪の場合はバス停からバスに乗り、どっか駅の近くに行こう。
駅の近くなら泊まるとこもあるだろう。しかししかし、当初の予定だった健康ランドに行きたいなぁ。
よし、やっぱり健康ランドをめざそう。距離的に歩いてもなんとか行けそうだ。決めたっと。
自転車を押して1時間くらいだろうか、大きな川を越えたあたりから向い風はだいぶましになった。よし、いいぞ。事態は徐々によくなっている。自転車はパンクしているが。
ふと、なんか大きな看板があるのに気がついた。
期待を込めて近くにいくと、ドラッグストアーのようだ。くそう。ドラッグで自転車は治らない。
まてよ、その隣にもなにかあるぞ。薬のマツモトキヨシだった。薬屋を2軒並べてどーすんだ。
壊れているのは、人間ではなくて自転車なのだった。
さらにその隣にも関係ない店がある。さらに隣にも関係ない店。どんな店かもう覚えてない。
一番奥にあったのがホームセンターだった。ここで修理してもらえるかもしれない。
私はホームセンター入り口の人に聞いてみた。その人は、おはスタのヤマちゃんに似ていた。
ヤマちゃんによると修理はできないとのこと。ただ、応急修理用のタイヤにゴムだか接着剤だかをぶしゅーと吹き込むやつはあるとのことだ。
近くに自転車屋があるかどうか聞いたが、知らないとのことだ。きっとヤマちゃんはこのへんに住んでる人じゃないんだな。
いったん店を出て、いや、やっぱり応急修理剤を試した方がいいんじゃないかと思い直し、再度入店、ブツを買った。店を出てから、結構激しい便意を覚えて、再度店に入って、トイレを使った。
店に出たり入ったりする不審な男になってしまった。
さて、とりあえず買った応急修理剤。私の持つ情報に寄ると、この応急修理剤を使ったおかげで、チューブ全体がイカれたとか、パンクの穴が広がったとか、ろくな話がない気がする。
だがまあ、ここはこいつにたよるしかあるまい。
タイヤに応急修理剤注入だ。ぶしゅう、という頼もしい音とともに修理剤がタイヤに注入されていく。
おお、タイヤがぱんぱんに張っている。これはいけるかも。説明書によると使ったあと3分待てとのことだ。カップラーメンみたいだな。
待っていると、しゅううう、という音が聞こえてきた。なんだろう。ふと見ると、タイヤの注入口や、パンクしたと思われる箇所から白い泡が吹き出ていた。これが修理剤の正体らしい。
うわあ。
私は想像した。このままほっておくと、チューブが破裂する。私は、タイヤの空気注入口のねじを緩めた。そこからも勢いよくほとばしる白い泡。悪夢のようだった。
泡がおさまると、次第に空気は抜けてタイヤはぺちゃんこになった。
応急修理剤は、わらにもすがる気持ちの人間をだます商品。体験したことをもとにそんな情報を胸に刻んだ私は、泡だらけの自転車を再び押して歩き始めた。
田んぼの風景をぺたぺたと自転車を押して進む。これからどうするか、大体考えは決まっていた。
とにかく、健康ランドに徒歩だろうがなんだろうがたどり着く。自転車の修理は一泊してから考える。これでいこう。
何個目かの田んぼを越えたとき、店のいっぱいある通りに出た。そうだ、店があるうちに、なんか食い物を買っておこう。先は長い。
パン屋があったので、ピザパンとスティックパンというのを買った。そして、だめもとで店のおばちゃんに聞いてみた。
「あのう、このへんに自転車屋さんってないですかね〜?」
「ああ、ありますよ。」
「ええっ、ありますか!」
目の前の道をバス停2つ分くらい行ったところにあるらしい。私はおばちゃんに5回くらいお礼を言い、自転車屋に向かった。
自転車屋はあった。いや、正確にはバイク屋だが、自転車も販売しているらしいのだ。店先には、髪の毛が一本もないおっさんと、長髪の似合わない太目のにいちゃんがいた。とりあえず店に入ると、第三の白髪のおっちゃんが出てきた。
パンク修理お願いできますか?と聞くと、できるけど時間がかかるとのこと。とはいえ、1時間くらいらしいので、自転車を預けて1時間後に戻ってくることにした。
すでに九十九里浜はすぐそこだったのだ。自転車屋から歩いて砂浜に来た私は、レジャーシートを敷き、さっき買ったパンを食い始めた。
この寒いのにサーフィンしている人が居た。砂浜ではお父さんと娘さんだと思うのだが、フリスビーのなげっこをしていた。
パンも食い終わり、ぼーっとしているとこんにちはーっと声が聞こえた。
さらに、もう一段大きい声でこんにちはーっ。
どうも私に向かって言っているらしいと気づいた。とりあえずこんにちはー、と返す。
見ると茶髪のおばちゃんが居た。犬の散歩で来ている人らしい。
何してるのかと思って声をかけたとのことだ。
入水自殺をしそうな不審者に見えたのだろうか。
まあ、夕方の寒い時間にレジャーシートひいてぼーっとしてる人間が居たら不審だろう。
おばちゃんは、昨日はサーフィンの人がいっぱい居たとか、でも昨日のうちに帰ったとか、そういうことを話していた。私は自転車パンク修理を待ってる、と話すとおばちゃんは、じゃあ風邪ひかないようにーと言って去っていた。
さて、そろそろ1時間だ。戻ると、自転車のパンクは直っていた。
おっちゃんは、その自転車は、普通の折り畳みとはちょっと違うねえと言い、私はええ、縦に畳めるんですよ、ちいさくなるんですよー、と答えた。
すこし自転車に関する雑談をして、8回くらい礼を言って私は去った。
これで今回の難関はクリアしたわけだ。
太陽の里まではおよそ10分くらいだった。ほんとうに近くまで来ていた。
到着は8時前、チェックインして入る。
風呂に入った。ああ、気持ちいい。尻がしみるのは予想通りとして、両腕がやけにしみる。
どうも日焼けをしたらしい。そういえば日焼け止めを塗ってなかった。
風呂は結構広く、バイブラ、ジェットバス、ふつうの風呂、露天風呂、ヒノキ風呂、樽風呂、打たせ湯などがあった。サウナもあり、もすこしお金を出すと砂風呂というのも入れるらしい。
ジェットバスというのは、ものすごい勢いで水流というか、泡が出てくる風呂だ。疲労した足の筋肉をほぐすため、そのジェットの前で体をくねくねし始めた。これは秘密だが、ジェットが股間を直撃するとなんだか未体験ゾーン突入、確変!という感じがする。
ささっと体と髪の毛を洗って出た。そして、しばし仮眠室に。1時間後くらいにもっそりと起きだし、ビールとおつまみを飲んだ。
飢えた私の体が、スポンジのようにアルコールを吸収していく。
吸収後、また風呂に入った。そのうち眠くなってきたので本格的に寝ることにした。
深夜2時ごろだろうか、仮眠室にたちの悪い酔っ払いが乱入してきた。
仮眠室の明かりをつけたり消したりした。火事だ火事だ!と叫んだ。壁をどんどん連打し始めた。まわりで舌打ちが3つ4つ聞こえた。
私も目が覚めたので、再び風呂に。誰も居なかった。露天風呂の脇にある、チェア―というのか、ねっころがることができるイスに横になる。星が、あまりたくさんではないが、見えた。
夜の独り占め感。空に湯気が立ち上る幻想的な感じというか。さっきの酔っ払いが乱入してきて良かったかも知れない。乱入当時は消火器でその悪い酔いを消火してやるぜ!くらいは思っていたのだが。
仮眠室に戻ると酔っ払いはおとなしくなっていた…というか、どっかにいったのかも知れないが、代わりに横幅の広い人が急降下爆撃のようないびきを出していた。理由はわからないが、その人は全裸で寝ていて見苦しかった。
結局、肩もみイスに座って少し寝て、風呂はいってを繰り返して、6時前になった。さらば太陽の里、また会おう。ということでチェックアウト。
そとはすっかり明るかった。昨日は気にしなかったのだが、メイン建物の両脇にあるペンションとやらは、なんというかその、ラブなホテルっぽかった。
いや、まあそれはそれでいいのだが。
せっかくなので、九十九里浜の日の出を見に行った。日の出というか、すでに完全に太陽は出ている。綺麗な光景だった。
心が洗われた。うーん…半分くらい…いや、3割くらいは洗われた。
この時点ではまだ、どっかをうろついていたい気分だった。しかし、セブンイレブンで買ったパンを食ってある程度腹がいっぱいになると、じゃあ帰ろうか、という気になっていた。
私は腹がいっぱいだと帰りたくなる。
太陽が徐々に上がってくる。
今日も暑くなりそうだ。
私は最寄り駅、八積駅に到着し、そこから電車で帰ってきた。少々寝不足だったせいか、電車のなかで激しく船をこいでいた私だった。
わかりやすく言うと、派手に居眠りブッこいたということである。
今回学んだことは、多少の障害があったほうが旅は面白いということ。
とはいえ神様、せいぜいパンク程度の障害にしておいてください。お願いします。
お願いしたところで今回の日記を終わる。