4月第二週。
もはや完全に春と言っていいだろう。都内はもう桜が散り始めたりしている。
寒いことを言い訳に特に運動らしきものをしていなかった私は、
なまりきった肉体を持つ男になってしまっていた。
いや、もともと肉体はなまりきっている。言い直そう。
ものすごくなまりきった肉体を持つ男になってしまっていたのだ。
特に腹が大変なことになっている。腹地獄だ。
そんなわけでリハビリもかねて週末に出かけようと考えていた。
土曜。明け方に出かけるつもりが寝過ごした。時刻は7時。
なんかけちがついちゃったなぁとうだうだしているとあっという間に昼になった。
よし、夜中に出発しようと考え直し、昼寝した。
夕方おきて飯を食ったら眠くなり、気づいたら日曜の朝7時だった。
これはあれだ、スタートの際に細かいことをうだうだ気にして結局スタートしないというだめなパターンだ。
ええい、とりあえず必要と思われる荷物を一通り持つのだ。そして外へ出るのだ。
靴を履こうとしたとき、靴のかたっぽがやけにぬれていた。どうも猫のおしっこ攻撃を喰らったらしい。
うちの猫はなんか異臭を発するものがあるとマーキングをしようとするのか、
靴の類は手の届かないとこにおいとかないと攻撃されるのだ。
くっ、けちがつくにもほどがある。負けるか。
とりあえず靴は水を張ったバケツにほおりこんでおいた。まともな靴は通勤用の革靴のみ。仕方ないこれでいこう。
折りたたみ自転車をひろげ、というか乗れる状態にしてとりあえず出発した。
どこいこう。うーん、北と西はよく行っている気がするなあ。じゃあ南東を目指そう。千葉方向だな。じゃあ、千葉の先っぽを目指そう。
そんな遠いとこに日帰りでいけるわけがないような気がしたが、考えていてもしょうがない。とりあえずそれでいこう。
ところで今回、携帯電話を機種変更した。カメラつきのやつだ。今回の写真は全部携帯のカメラでとったものだ。結構よくとれているな。
まず中野坂上まで行き、マクドでソーセージエッグマフィンセットを食った。
これを食わないと始まらない。
せっかく携帯にメール機能もあるし、これを知り合いにメールで送りつけることにした。知り合いはああ別に構わないけどみたいな感じだった。まあいいか。
この写真からちっこくなっているが、どうもちっこいサイズじゃないとメールで送信できないらしいのだ。
まあよくわからない。写真がとれてればどうでもいい。というわけで再出発だ。
都庁だ。私の会社も近くにある。用もないのに休みの日に会社の近くにいくのはなんかいやだなあ。
都庁の周りには観光客がいっぱいいた。
みんなでぞろぞろ名所を見て回っているようだ。
都庁もロケット噴射を開始して宇宙に飛んでいくくらいのしかけがあれば
客も喜ぶのにな。
まあそんなことがあったら私も喜んで見てしまう。
さて、目指す方向は南東だが、とりあえず南を目指してみた。
しばらくすると渋谷の近くあたりにたどり着いた。私は渋谷のあの人の多さが苦手だ。酔ってしまう。
なるべく駅の周辺はさけるように進んでみる。果たして駅から遠ざかっているのかどうかはよくわからない。
特にどうということもない道を進む。
上着はグレーのパーカー、ズボンは黒のダブついたやつ。ズボンはチャックにより長ズボンから半ズボンに変形できるやつだ。というか単に取り外せるやつだ。
そんなカッコウなのに靴は革靴だ。ちょっとおかしい人だ。
途中で靴屋があれば安いのを買おうと思っていたのだが、まるで見つからない。どういうことだ。
なんだかお花見によさそうな桜にはさまれた静かそうな道に出た。
近づくと青山霊園で両端はお墓だった。夜中に来なくてよかった。
まあこの写真にもきっと顔に見える何かが3つや4つは写っているんじゃないだろうか。
ひい。
これはえーと、たしか六本木付近だ。知ってる地名が出てきても特に楽しくないのはここが単なる都会だからだ。私は自然あふれるところがスキなのだ。
その後も知ってる地名をいくつか通過した。そして。
自然だ!海だ!
東京湾だ!
油がいっぱい浮いてそうなイメージがある東京湾。背骨の曲がった魚がいっぱいいそうな東京湾。妖怪人間とかが生まれそうな東京湾。
私の持つ東京湾のイメージはろくなものがないが、それでも潮の香りが私のテンションをひきあげる。
こっから東に行けば千葉のはずだ。
今回はうっかりして地図を忘れてきた。
ただ、ハンディGPSはもってきている。スイッチオン!道を教えてお星様!
どうも南に来すぎたらしい。少し先に多分レインボーブリッジじゃないかなあと思われる大きな橋があった。
GPSによると北に戻ってから改めて東に向かわなければ千葉にたどり着けないらしい。
なんだ損しちゃったなあと思いながら北に向かう。海の近くは倉庫がいっぱいあるなあ。どう間違っても靴屋はなさそうだなあ。
浜松町の近くを通りがかり、高架の向こうに東京タワーの根っこが見えたので撮ってみた。こうしてみると全くわからない。
単なる高架の写真だ。
そして、そろそろ足の一次限界がきていた。普通に言うと足がつりそうになっていた。
もう限界なのか。とはいえ、この時点で約4時間だ。ものすごくなまった肉体を持つ私としては妥当なところかもしれない。
道端に腰掛けられそうなコンクリがあったので休憩してみる。革靴の中の足もむれてそうだ。
5分して少し回復したようなので出発した。
この写真に「いひ」とタイトルをつけて知り合いに送ったら、会社の正式名称を回答されてしまった。
石川播磨えー、なんだっけな、なんとか重工だということだ。
しばらくしてジャスコを見つけた。
ジャスコなら靴もあるだろう。よし。
しかし、子供服と食料品がメインで靴は日曜大工コーナーに安全靴しかなかった。くそう。子供服コーナーが巨大すぎる。
子どもだらけかこのへんは。まあいい、子どもに罪はあるまい。
そしてついに千葉に!
知り合いにも千葉だ!みたいなメールを出したのだが、どうもまだ都内江東区だったらしい。知り合いにはだまっておいた。
このあたりから足に加えて尻の痛みも出てきた。そんでもって腹も減った。
なんかうまい定食でも食いたいとこだったが、未だ回りは倉庫だらけ。
コンビニを探すことにした。足がつってくる。
ええい、そんないちいち休憩してられるか。かまわずペダルをこぐ。
コンビニを発見し、自転車をコンビニ前にとめた。自転車を降りた瞬間、両足太ももとも足がつっていた。痛い。歩けない。色々体勢を変えるが何をしようが痛い。そりゃあつってるんだから。
コンビニの店員がすぐ外で身をねじってもぞもぞする男に気づいたかどうか。
今この瞬間、となりにとめてある自転車の持ち主が店内から出てきたりしませんように。
そんだけ人目を気にする余裕があればきっと大丈夫だ。
しばらくして足は回復、店内に入ってネギトロワサビおにぎりとか
サンドイッチとかスニッカーズとか魚肉ハムを買った。
買いすぎだ。腹減ってるときに飯を買うとつい判断を誤ってしまう。
店員はおにぎりあたためましょうか?と聞いてきた。
ネギトロワサビはあっためて大丈夫なんだろうか。
こころなしか隣の店員がそれを聞いてええっという顔をしていたような気がするが、
今となってはあっためたらどうなるのかわからない。私はいえ結構ですと答えてしまったのだ。残念だ。
コンビニから少しはなれ、道路の脇で飯を食った。ちょうど桜の木の根元で、ひらひらと舞い落ちる桜に風流を感じるようなことは特になく、単に飯を食って出発した。
暑い。昔は暑いのは苦手だったが、今は楽しくすごせるなあ。仕事のときに暑いのはいやだけど。
足の痛みをごまかしながら小休憩をいれつつ進むとイトーヨーカドーがあった。よし、今度こそ靴を。
中に入ると大きな靴コーナーがあった。5000円とか6000円とか。なんつーかこう、2980くらいのないの?と探していたがどうもないらしい。
靴コーナーの横に無印良品のコーナーがあり、700円の黒いサンダルがあったのでこれでいいかと思い、買った。
自転車のとこに戻る。サンダルの値段のタグを常備している爪切りで切った。そんなものを常備する必要があるのかはわからないが、100円ショップで衝動買いしてしまったのだからしょうがない。
革靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ、サンダル装着。おー、爽快感。ここで革靴はかばんの中にしまわれ、役目を終えた。ありがとう革靴くん、月曜にまた会おう。
さて、せっかくサンダルに履き替えたのだが、私の足は徐々に回復速度が遅くなってきていた。
とりあえずゆっくり当初の目的の方向を目指していたが、まあ、千葉の先っぽはだめだろうなあと思い始めていた。
近くに公園があったので座って休憩する。ズボンの太ももとひざのあたりについている着脱用のジッパーを半分開けて空気の入れ替えをした。
股間のジッパーではないので気をつけてほしい。それは単なる変質者だ。子どもに石を投げられてしまう。
そしてついに浦安だ。ディズニーランド行くときに名前が出てくる浦安だ。
浦安の、ちっこいこ汚い川で休憩を取った。コーヒーを近くの自販機で買う。
木でできた正方形の大き目のイスがあったのですわる。いい天気だ。あったかい。
川の流れがちゃぽちゃぽと聞こえる。
ふと上をみるともう8割がた散っているが桜が咲いていた。
今年は花見らしい花見をしなかったが、まあこれが花見ってことでいいか。
コーヒーを飲み、川のちゃぽちゃぽを聞き、のんびりした。
いいなと思ったものに出会えたとき、私の冒険は終わる。
というかもう尻がめちゃくちゃ痛いので帰りたかった。
その後GPSの力を借りて東西線浦安にたどり着き、そのまま中野まで帰ってきたのだ。さらに帰ってきたあと銭湯にいき、帰りに焼酎の緑茶割り(冷)350mlを2缶買ってきて飲み、その勢いで日記を書いているのだ。
千葉の先っぽは結局目指しただけだったなあとか、ゴールデンウイークこそはちゃんと初日から出かけたいとか思いつつ日記を終わる。