孤独のグルメを読む


 孤独のグルメ、という漫画を読んだ。 

 個人で商売をしている男がスーツを着て、ビジネス街で見知らぬ店に入ってひとりで飯を食う、という話。
 だが、なんとなく入った店で食べた事のないようなおいしい料理に巡り合ったり、何かを食べた瞬間稲妻が走って「こ、これはぁっ!」と叫んだりすることはない。
 「これはおいしいな!」という展開もたまにはあるのだが、「味付けが濃すぎるな…」「そのメニュー来月からなんですよ」「今の時間はやってないんですよ」「あの店つぶれちゃったのか」という残念な流れになることが多い。盛り上がりに欠けるのだが、その分リアルで、ついつい読み進めてみたくなる。
 昼飯を食う店をなかなか決められずにうろうろしてしまったり、注文を店員が聞き取ってくれなくてイヤな気分になったり、一人で焼肉屋に入ってめちゃめちゃうまそうに食ったりする。何よりも主人公がさえない男で特に特殊な才能を持っているわけではないところが、とてもいい。私のことか?と思ってしまうほどだ。あとは、細かいこところがいちいちリアル。原作者が実際に食べに行ったんだろう。
 普段はのほほんとしている主人公が、一話だけ、ものすごく怒るエピソードがあって、それがすごく印象に残った。私は、ああこんな時は怒ってもいいんだな、となんだか納得してしまった。主人公はちょくちょく、ものすごい量の料理を注文したりするので、お前どんだけ食うつもりだ、と心の中で突っ込みを入れたりもしながら、楽しく最後まで読めた。
 1997年に刊行され、じわじわ売れ続けて、10万部突破なんだそうだ。ああ、続きがあればもっと読みたいのに。
  →孤独のグルメ  (扶桑社文庫)