荼毘にふされる話

昨日、ととっこを中野の哲学堂動物霊園というとこに連れてった。近いとこがいいだろうという理由で、わりとあっさり決めた。

 

電話したときに、個別で火葬するか共同で火葬するか聞かれたので、じゃあ個別でと伝える。私はこのとき、「ダビニフサレル」というのは、火葬されるってことなのだと初めて知った。漢字で書くと、荼毘にふされる。お金は1万8000円ほどかかるらしい。まあ、そんなもんなんだろう。

 

ととっこをバスタオルでくるみ、ダンボール箱に入れてひもを十字にかける。

 

箱を持って、タクシーで哲学堂動物霊園まで行く。

 

受付で、電話したものですがと伝えると、最後の別れをするための何という場所なのかわからないが部屋に通された。台と、お経が書かれた掛け軸と、位牌、それに線香、チーンと鳴らすやつ、ろうそく、数珠がセットになって置かれている。

 

台の上に箱を乗せる。箱は係のお姉さんの手で空けられ、ととっこの姿が見えた。なんかいたずらしたりしてないかと思ったが、昨日のままの姿でそこにいた。

 

「この度はご愁傷様で…」と言われる。そうか、動物の場合もご愁傷様って言うんだなと思っていると、「最後のお別れをして下さい」と言われた。お姉さんは退場する。

 

昨日、さんざん別れの挨拶をしたんだけどと思ったが、線香に火をつけて、チーンを鳴らして数珠も手に巻きつけて手を合わせた。涙は、昨日さんざん出したせいか、特に出てこなかった。

 

二回目のチーンを鳴らして、数珠をおき、ととっこを見てみる。なかなかの毛づやで、寝てるだけなんじゃないの?と思ったが、触ってみると硬くて冷たかった。

 

お姉さんが戻ってくる。埋葬場所に案内してくれるそうだ。私は、じゃあ、と、ととっこに軽く手を振って部屋を後にした。

 

埋葬場所はきづな塚というところで、花がたくさん添えられてた。巨乳の別のお姉さんが水で掃除をしてた。ちょっとした補修工事をしているらしく、おっさん二人が塚の後ろで作業をしてた。案外狭い場所である。

 

この後、火葬して埋めるんだそうだ。埋葬したら電話で知らせるとの事だった。

 

係のお姉さんに、最後にもう一度挨拶していきますかと聞かれたが、私は、いや、もうこれで帰りますと断った。あんまりしつこく挨拶したらととっこが迷ってしまうからな。

 

よろしくお願いしますと伝え、動物霊園を去る。

 

あれっ、なんか忘れ物してきちゃったかな。なんで手ぶらなんだろ。

 

その忘れ物がととっこであることに気づいた私は、道端にうずくまって、声を上げて泣いた。私は、自分自身が声を上げて泣いたりすることを意外に思いつつ、徐々に気持ちを鎮めて立ち上がる。

 

行きはタクシーだったが、帰りは歩きで家まで帰る。

 

帰ってきて、ただいまーと言ってからまた気がついた。ちらかった部屋で、空っぽのペットボトルを机から落としてしまって、カラコロローンと大きな音がした。ああ、ごめん、と言いかけてまた気がつく。

 

私はほんと馬鹿だなあと思った。