新・肉落とし


 なんとか下半身の肉を新しいズボンに封じこめることに成功した私は、調子に乗って新しいズボンを通販で注文していた。
 ちゃんと学習して、ウエストが2センチほど大きめなのを買う。
 今、なんとかはけているものより2センチ大きいならば、それはちょうどいいということなのではないか。無理やりズボンの上に押しあげた肉の浮き輪を気にすることなく、楽しい日常生活を送れるのではないか。
 わくわくしながら待つ。すそ上げに時間がかかるとかで、一週間ちょっとでズボンが届いた。
 履くのに少し…、いやかなり勇気がいるテカテカジーンズと、カーゴパンツ。カーゴパンツとは、でかいポケットのいっぱいついたジーンズのことなんじゃないかと思う。本当かどうかはわからない。
 おしゃれとはあまり縁のない人生を歩んできた私は、そいつらのかっこよさにため息を漏らした。
 最近、買い物しまくっているこの代官山ボディーバターというショップ、どうかしちゃってるようなデザインのものもあるが、私の魂を貫くようなかっこいいデザインのものも多々あるのだ。
 ちなみに蛇皮コートや、想像上の金持ちが着る寝巻きのようなコートは、かなりどうかしちゃってると思う。

 

 

 

 

 

 

 

▲ヘビ皮コート 

 



▲想像上の金持ちが着るような 

 




着ていると、残酷な子供に、蛇が歩いてるとか、寝巻き着て歩いてるとか道端で叫ばれそうで恐ろしい。そんなふうにちょっと無理なものもあるのだが、基本的には個性的でかっこいいものがそろっているのだ。
 私は、目の前の個性的でかっこいいズボンに下半身を滑り込ませた。
 いや。
 余裕でしゅぱっと履ける予定のそのズボンは、尻と腹が入らなかった。私はその状態のまま、動きを止めて考える。
 どういうことなのか。サイズが少し大きめなはずなのに、履けないとは。よくよく確かめると、たしかにウエストは2センチ大きいのだが、ヒップ、つまり尻の部分が1センチ小さいのだ。なんという、数字の暴力。いや、暴力ではない、私がよく確かめなかっただけだ。
 履けない二本のズボンを目の前にして、途方に暮れる私。
 大丈夫、大丈夫だ。もう少し肉を落とせばいいのだ。そして、毎日無理やり履いてれば、そのうち履けるようになるかも知れない。いいや、きっと履ける。
 「絶対に!履ける!」
 私は部屋の中で声に出して、気合いを入れた。さっきまでごそごそやってた人間が急にしゃべったので、二匹の猫たちはびっくりして逃げた。
 とりあえず、新たに肉を落とす決意を固めつつ、今回の日記を終わる。