なんとか
下半身の肉を新しいズボンに封じこめることに成功した私は、調子に乗って新しいズボンを通販で注文していた。
ちゃんと学習して、ウエストが2センチほど大きめなのを買う。
今、なんとかはけているものより2センチ大きいならば、それはちょうどいいということなのではないか。無理やりズボンの上に押しあげた肉の浮き輪を気にすることなく、楽しい日常生活を送れるのではないか。
わくわくしながら待つ。すそ上げに時間がかかるとかで、一週間ちょっとでズボンが届いた。
履くのに少し…、いやかなり勇気がいる
テカテカジーンズと、
カーゴパンツ。カーゴパンツとは、でかいポケットのいっぱいついたジーンズのことなんじゃないかと思う。本当かどうかはわからない。
おしゃれとはあまり縁のない人生を歩んできた私は、そいつらのかっこよさにため息を漏らした。
最近、買い物しまくっているこの
代官山ボディーバターというショップ、どうかしちゃってるようなデザインのものもあるが、私の魂を貫くようなかっこいいデザインのものも多々あるのだ。
ちなみに
蛇皮コートや、
想像上の金持ちが着る寝巻きのようなコートは、かなりどうかしちゃってると思う。
着ていると、残酷な子供に、蛇が歩いてるとか、寝巻き着て歩いてるとか道端で叫ばれそうで恐ろしい。そんなふうにちょっと無理なものもあるのだが、基本的には個性的でかっこいいものがそろっているのだ。
私は、目の前の個性的でかっこいいズボンに下半身を滑り込ませた。
いや。
余裕でしゅぱっと履ける予定のそのズボンは、尻と腹が入らなかった。私はその状態のまま、動きを止めて考える。
どういうことなのか。サイズが少し大きめなはずなのに、履けないとは。よくよく確かめると、たしかにウエストは2センチ大きいのだが、ヒップ、つまり尻の部分が1センチ小さいのだ。なんという、数字の暴力。いや、暴力ではない、私がよく確かめなかっただけだ。
履けない二本のズボンを目の前にして、途方に暮れる私。
大丈夫、大丈夫だ。もう少し肉を落とせばいいのだ。そして、毎日無理やり履いてれば、そのうち履けるようになるかも知れない。いいや、きっと履ける。
「絶対に!履ける!」
私は部屋の中で声に出して、気合いを入れた。さっきまでごそごそやってた人間が急にしゃべったので、二匹の猫たちはびっくりして逃げた。
とりあえず、新たに肉を落とす決意を固めつつ、今回の日記を終わる。