ぴろぱろぷりろりーん!
逃げ場のない電車の中で、素っ頓狂なメロディが突如鳴り響く。誰かの携帯だ。
私の携帯は常にマナーモードである。誰かから電話がかかってきても気づかない確率は80%だが、急用の電話などほとんどないので、その日の夜にでも「何か用だった?」と電話する。それで済む。
いちいちかかってきた電話に出ていたら、のんびり出来ないではないか。私が許可した時間のみ着信すればいいのである。周りに配慮するというよりは、いちいち出るのが面倒だからマナーモードにしている私であった。
じゃあ電源切ればいいじゃないかと思うかも知れないが、着信したという記録だけは残っていてほしいのである。難しい年頃なのである。
そういう消極的な理由でマナーモードにしている私だが、電車なんかの閉じた空間で何度も他人の着信音を聞くのは嫌である。ほうらいい音だろう聞けよ、とでも言いたげに、何度も何度も着信音を響かせるやつがいる。メールのやりとりをしているようだ。
お前はいまどき、電話したりメールしたりしてることを他人にアピールしたいのかと言いたい。俺、他人から電話かかってきてんだぜー、にんきものー、とでも言いたいのかと。もういいから、車両と車両の間のジャバラの狭い空間に挟まってメールしてろと言いたい状況なのであった。
そんな状況を打破するためのマシーンを発見した。その名も、「黙れケイタロー」。作ったのは絶対にオヤジだ。賭けてもいい。少なくとも、名づけたのは絶対オヤジだ。
このマシーン、ポケットの中なんかに忍ばせておいて、スイッチをオンにすると半径5mの生きとし生ける携帯が圏外になるのだという。なんて面白い機械なんだ。どんなイタズラに使えるのかとわくわくしてしまう。(※イタズラに使ってはいけません)
ただ、5mという範囲が微妙と言えば微妙で、それ以上強力にすると何かの法律にひっかかっちゃうんだろうなあ。
私がこのマシーンを手に入れたら、道端で客先とやりとりしてるサラリーマンの横とか、楽しそうに彼女と話してる男の横とかで、何度もスイッチをオンオフさせてみたいと考えるのであった。
また一つ、私の心の闇を公開してしまったところで今回の日記を終わる。