スーパーの肉コーナーには、ちゃんとした肉に混ざって「すじ肉」が売られていることがある。ある日、ものすごく大量のすじ肉がパックに入っているのを発見した私は衝動買いした。
もちろん、これからすじ肉を食べるわけだが、その前にすじ肉に対する私の知識を整理してみたい。
・すじ肉はよく煮込んだりしないと固い
・おでんに入ってるすじ肉はおいしい
・焼くだけではやわらかくならない。電子レンジの力でもやわらかくならない
よし、理解したぞ。すじ肉はやわらかくして食べないとおいしくない、やわらかくするためには焼くよりも煮込んだ方が良い、ということだな。
私はすじ肉を片手なべの中にぶち込み、水を入れて煮込み始めた。すじ肉たちは結構大きくて、一口で食べられる大きさに切っておけばよかったのだが、後の祭りだった。
水が沸騰し、お湯になる。それに従い、すじ肉たちも煮えてきて、色が変わってきた。そして、大量に吹き出す油。あまり油を摂るとよくないので、煮汁を一気に捨てた。そして、さらに水を入れ、煮続けた。
煮ている間、テレビを見ながら猫のおなかをさすったりして待つ。
すじ肉はまたしても大量の油を出していた。尽きることのない油。油地獄。さらに煮汁を捨て、水を入れて煮続ける。こんなことでいいんだろうか。
そういえばどんな味をつけるのかを全く考えていなかった。おでん風の汁を作りたかったが、やり方がよくわからない上に、手持ちの調味料では無理そうだ。
少し考え、醤油と砂糖を入れてみる。私の実家風スキヤキの汁である。聞くところによると各地のスキヤキというのは作り方が大層違うらしいな。
さて、煮込んでいくと、またすじ肉は大量の油を出していた。既に醤油や砂糖などを入れ、ファイナルスープに仕上げる準備をしてしまった後なので煮汁を捨てることは出来ない。スプーンで油だけをすくって捨てようと思ったが、焼け石に水だった。
汁はものすごく濃い、油っぽいどろどろしたものと化し、地獄のどこかにはそういう感じの池があるんじゃないだろうかと想像した。油を吸い取る野菜のようなものを入れてみてはどうか。
冷蔵庫をさぐると、私がひいきにしているきのこ、シメジがあったのでイシヅキの部分を切り、ばらばらと地獄汁の中に入れた。
シメジはあっというまに地獄汁の餌食となり、油っぽさが緩和されるようなことは特に無かった。他には、特に入れられるような野菜はない。
すじ肉のうち、小さなかけらを食べてみると、まあまあやわらかくなっていた。だが、これを単体で食うと気持ち悪くなりそうな油っぽさだ。味は牛丼のできそこないと言えないこともない。
私はごはんに地獄汁をかけて、牛丼風にして食べてみた。すじ肉は1/3程度はやわらかく仕上がっていたが、残りはごりごりと軟骨の固い部分がそのまんまで、よせばいいのに無理をして噛み続けた私は奥歯が痛くなった。
油の威力もすごい。一瞬にして気持ち悪くなる。私は早々に食事を終えた。そして、水をコップに3杯ほど連続で飲み、油ののろいをなんとか消したのだった。
まだまだ鍋に大量に残っている地獄汁をどうしようかと悩みつつ、今回の日記を終わる。