ひさびさの自転車旅行 …というか、函館旅行

ひさびさの自転車旅行 …というか、函館旅行


 2008年5月。
 ゴールデンウィークを若干後ろにずらして休むことに成功した私は、久しぶりに自転車の旅に出ようと目論んでいた。
 出発前日、どこに行こうか計画は立っていない。
 4,5年前に私と冒険をともにした折りたたみ自転車はフレームがゆがみ、長距離走行はもはや不可能となっていた。代りを務めるのは、そこいらで適当に買ったけど、いまいち小さくはたためない折りたたみ自転車である。
 さらに、私の絶望的な迷子を一瞬にして解決してくれた小型GPSも機械としての寿命を迎え、気づいたときにはもはや電源が入らなくなっていた。代わりは、今や当り前のように携帯電話についているGPS機能だ。
 まあ、なんとかなるか。
 これから寝るが、明日になって「やっぱり行くのはやめることにした」などと書く破目にならないよう祈りながら、いったん日記を終わる。
 <続き>
 やっぱり行くのはやめることにした。
 その代わり、飛行機でぐわぅぉんと空を飛ぶことにした。
 結局、次の日になっても出発せずにうだうだしていた私は、ネットでANAのサイトを見ていて、発作的にネットで飛行機を予約したのだった。
 6:40発の便は、特割1(一日前の予約で安くなる割引)で2万円弱だったので、それを予約。他の時間帯のやつと比べて安い。しかし、始発の電車で行ったのに空港についたのはギリギリだった。なるほど、だから安いのか。危ないとこだった。 もっとも、安いとは言ってもちゃんと一ヶ月くらい前から旅行代理店経由で予約しといた方が安いのは言うまでもないのだった。
 最近の、というか、もうずっと前からなのかも知れないが、空港でのチェックインは、あらかじめ携帯電話に読み込ませておいたバーコードをかざすだけでOKだ。
 検査場では、金属探知器にひっかかったので、コートを脱ぎ、それでもひっかかったので、ベルトも外した。晴れて自由の身である。時間がないので、ベルトのないまま搭乗口に向かうと、搭乗口ではどっかのおっさんが「こんなことをしなくても個人認証できるはずだ!」と、なんだかもめていた。
 搭乗口に飛行機が横づけされているかと思ったが、そうでもなく、バスで飛行機の横まで移動するらしい。座席はいくつかあいていたが、俺の横に座るな的に荷物が置かれてガードされていたので、ガードされちゃあしょうがないよなあと立つことにした。私としても見知らぬ他人と密着して気まずい時間を過ごすよりは立っていたほうがいい。荷物も少ないし。
 数分後、飛行機の横にたどりつき、乗り込む。
 私の席にはなぜか誰かが座っており、ああ、ダブルブッキングというやつに遭遇したのかと思ったが、その人が場所を1個間違えて座っているだけだった。シートベルトを締めると飛行機はすぐに発進。機内はなぜか、前方に人が集中していたが、翼から後ろはがらがらだった。
 前方に乗った方が事故のとき生存確率がどうとか、そういう理由なんだろうか。(→飛行機でもっとも安全な位置はどこですか? - Yahoo!知恵袋


▲空港出たとこ
 雲の上をぐわわんと飛び、到着したのは函館。寒かった。シャトルバスで函館駅に向かう。


▲函館駅
 朝飯を食い損ねていた私は、とりあえず何か食うことにした。駅のすぐよこには、函館朝市というのがある。北海道の朝市と言えば、どんぶりの上に海鮮をどかどか乗せて食う海鮮丼だろう。
 朝市をぶらついていると、店のおっさんやおばはんが声を掛けまくってくる。「兄さん何か探してるのー?」という独特の声のかけ方だ。「カニ安いよー」とかではなく、まずは客側の気持ちに立って話を聞いてやろうというスタンスなわけである。
 ただ、私としてはカニを売ってる店の人に、ウニが食べたいんですけど、と言うのはちょっと違うだろうと思っていたので、いやいやいやいや、あっはっはっは、というあいまいな態度でとりあえず朝市を一周した。
 で、結局、一番目立つとこにある無難そうな店に入る。


▲海鮮丼
 ここまで来るのに何の苦労もしていない私は、いきなりこんな、北海道の目的っぽいものを食って申し訳ない気がしたが遠慮なく食べた。
 うまい。
 長い人生、そこそこうまいものも食っている私としては、どんぶりを片手に立ち上がり、天に向かって、「うぅ…うまぁああい!」と絶叫したりはしなかったが、もしも誰も見ていなければそうしてもいいほどのうまさである。
 生臭さとは全く無縁のネタたち。イカはぬめりがほぼなく、つるつる、えびもぷりぷり、いくらは新鮮な鳥の卵のような味だ。うに、ほたても新鮮そのものである。
 食い終わった私は店を出た。さて、まったく無計画で来たので何をどうするか決めなければ。


▲駅前の観光マップ
 駅に、観光マップなるものがあったので眺めてみる。うーん。とりあえず五稜郭というのが目についた。以前、GYAOでやってたアニメ、 いろはにほへとでちらっと見たことがある。土方歳三が死を遂げた場所だということだ。とりあえず、そこに行ってみることにした。
 一応、やどの手配だけしておこうと、駅のあっせん所でホテルを紹介してもらおうと入る。
 中の人に声をかけると、整理券をとって下さいと言われた。役所なんかにある、順番待ちの紙が出てくる機械である。そうかそうか、他にも待ってる人が居たのか、それは申し訳ない、と思っていたら、誰も待ってなかった。「ただいまの待ち:0人」である。なんでわざわざそんな無駄なことをさせるのか。マニュアルばかなのか。
 整理券を取った瞬間、中からものすごい化粧をした女が出てきた。
 一昔前にパンダっぽい化粧が流行ったが、それのきついやつである。そして、紹介料500円かかりますと言われたので、やめた。なんなんだ。
 ぱっと駅前を見渡して目に付いたスマイルホテルに電話し、あっさり予約が取れた。さらに、帰りはできたら夜行列車で帰りたいなあ、と思っていたので、緑の窓口で寝台列車北斗星のチケットを購入。見習の札を胸に付けた、色白のかわいい娘が対応してくれて、無事に席がゲットできた。
 そうこうしているうちに、駅の観光案内所が営業開始したので、地図的なものをもらおうと入る。観光案内所には、別のパンダが居て、「ガイドブックお持ちになりませんかぁ~?」と、たぶん本人は努めてかわいく言っているつもりなんだろう、という言い方で声をかけられたのでもらった。


▲駅前
 函館には、通常バスのほか、路面電車が走っている。

 走っては居たが、いったいどこに行くのかよくわからないので、通常のバスで五稜郭まで行ったのだ。バスにゆられて10分かそこいら。


▲五稜郭タワー
 五稜郭は、きれいな星のような形状をしてるんだけども、地上から見てもさっぱりわからないので高いところから見てみませんか、840円ですという、そういうタワーである。
 今思えば、840円くらい払っても良かった気がするが、まあ、なんとなくのぼらなかった。
 近くの看板によると、こういう形をしているようだ。それは面白いからこうしてみようか、という訳ではなく、攻め込まれにくくするための形だったんだそうだ。

 へー。ああ、私は観光っぽいことをしてるなあ、と思いつつ、寒いのでタワーの1Fに入る。1Fにいるだけなら無料なのだ。休憩するためのベンチスペースや、土産物コーナーなんかがある。


▲ひじかたとしぞう
 そして、土方歳三が立っていた。当時の大砲なんかも展示してあって、おっさんたちがほうほうふむふむと、これらを眺めている。私もおっさんに混ざって、わかったような顔をして眺めておいた。
 そして、「女だけの相撲大会」というポスターを見つけ、瞬時にいやらしいものを想像した私であったが、巨大な女たちがぶつかりあう健全な大会っぽかったので行くのはやめた。というか、そもそも開催場所が福島である。

 さて、長くなってきたのでここいらでいったん中断することにしよう。(つづく)

 

唐突に思いついて函館に行った話 その2