サイゼリアというイタリア料理系のファミレスに出かけ、イカスミスパゲティを食べた。
同時にドリンクバーを注文し、コーヒーをすすったりしながらやつを待つ。コーヒーを半分ほど飲み終えたあたりで、小柄なお姉さんに運ばれてやつはやってきた。
黒光りするパスタがうねうねととぐろを巻いている。よく見ると、イカの足や輪切りになったイカの胴体なんかが入っている。
誰かと一緒に来たときにはなかなか注文しづらいイカスミスパゲティ。しかし、一人でやってきた私は、何の気兼ねもなく、この真っ黒けなスパゲティを思う存分食うことが出来るのだ。
左手にスプーン、右手にフォークを構える。フォークにパスタをからませ、くるくる回す。それを支える形で、スプーンを沿える。くるくるくるくる。
ちゅるり。私はぐるぐる巻かれた黒いスパゲティを口に入れ、味わう。
味は、どろりとしたシーフードスープっぽい感じ。イカスミ単体でこれほどの味が出せるとは大したものだ。
くるくる、ちゅるり、くる、ちゅるり。
パスタに飽きたらイカを食い、私の食事は進行中。
徐々に黒いパスタは減っていく。大盛りにしておけばよかったか。
しかし、私のもっと食べたい気持ちとは裏腹に、私はおなかいっぱいになりつつある。
おなか!
しっかりしろと心の中で自分のおなかを励ます。しかし、やつはもういっぱいいっぱいですと泣き言を言うのだった。いつしかおっさんの肉体になった私は、あまりたくさん食べることが出来なくなっていたのだ。
食べ終わった私は、ナフキンで口をぬぐう。真っ黒なスミでナフキンが汚れる。にっこり笑ったら、お歯黒ごっこが出来るだろうか。
食後のコーヒーを飲んで、店を出た。ごちそうさま、おいしかった。
翌日、イカスミスパゲティを食べたことをすっかり忘れていた私は、トイレで自分が生み出したコールタール状の何かに、うわあと声をあげていた。