「向かって左」にとまどう


 会話の途中に「向かって左」とか「向かって右」とかいう言葉が出てくるとドキッとする。
 爆発解除のコードを切断する場面で、「コードが二つあるがどっちを切ればいいんだ!?」「向かって左を!」「わかった!」と言って、逆側を切り、爆発したらどうしようと考える。そんな場面に遭遇するわけねえよと言われようが、怖くなる。
 そもそも、「向かって左」って、主語が抜けてないだろうか。いや、主語どころかもっと色々抜けてんじゃないのか。これは正確に書くと、「あなたが対象物の方向を向いたとき、あなたにとって左」ということではないのか。
 いや、それだったら単純に「左」でいいはずだ。
 いや、いや、いや。
 わかってきた。わかってきたぞ。
 単純に「左」と言うだけでは、どちらかわからない状況が存在するのだ。

     

  •  二体並んだ仁王像に対して、「左の像」
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  •  必勝だるまに対して「左側に目を書いて」

 あとは、うーん、もっと色々あるような、ないような。
 いっそ、「こっちだ!」と叫んで指さして欲しい。図示してくれてもいい。
 人生の行方を左右する局面で「向かって左」が出てこないよう祈りつつ、今回の日記を終わる。