沖縄まで来た両親と私は飢えていた。
とりあえず、空港から
ゆいレールという沖縄のモノレールに乗って、県庁前駅に移動する。
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移動中に巨大な池というか湖を通過する。この湖の名前が「漫湖公園」であることを知っていた私は、本当ならそこで降りて地名を連呼しながらおおはしゃぎしつつ写真を撮りまくりたかったのだが、両親と一緒なので自粛しておいた。
20分弱で、県庁前駅に到着する。
なんでここに来たかというと、今夜泊まるホテルがあるからだ。
地元の超有名店とかのリサーチが苦手な私は、特に昼食情報を持っていなかった。駅を出ると巨大なデパート、
パレットくもじがあったので入れば何か食えるところがあるだろと、ふらふら入り込む。
時刻は昼の1時前で、どの店も混んでいた。たまたま席が空いているのを発見した我々は、店内にその身を滑り込ませた。
入店したのは「みの家」という、沖縄そば屋。やはり、沖縄に来たら、沖縄っぽいものを食いたいというのは当然だろう。
▲ソーキそば定食
私は、ソーキそば定食を頼んだ。
沖縄の料理は名前だけ聞いてもどんなものか想像できないものが多い。ソーキというのは、豚の骨付き肉であることを私は体で、というか舌で学んだ。そばと名前がついていたが、うどんより少し細い程度の固い面で、スープは魚介系ラーメンのようだった。そして、豚肉がドゴンと入っているにしてはあっさりしている。そこに、巨大なかやくご飯と、謎の甘い漬物、海藻が入った煮物がセットになっていた。注がれたお茶はジャスミンティーっぽかった。
うまい。そして、量が多い。年に一回食うのを楽しみにするような感じではなく、日常的にちょくちょく食いたい感じの味である。
母は小さいおかずが色々入った定食、父はかつ丼を頼んでいた。
母の定食には、甘いみそ汁や豚の耳の酢味噌あえ(ミミガー?)がついてて、おお、沖縄っぽいなあというような感想を漏らしていた。父は、私のソーキそばを見て、ああそれにしておけば良かったというような顔をして、そのことを母に指摘されていたが、特に何の感想もなくかつ丼を食っていた。
腹いっぱいになって店を出る。
▲沖縄県庁?
デパートを出ると、目の前が沖縄県庁、そして「国際通り」という長い長い繁華街がある。土産物屋や居酒屋、レストランなどがずらりと並んでいるのだ。あちこちに修学旅行生と見られる子供たちがうろうろしていて、土産を物色している。
我々もとりあえず土産物屋に入った。
▲土産物屋入口にあったシーサー。
入店したのは「おきなわ屋」という名前の土産物屋だった。言ったもの勝ちのインパクトある店名に負けて、というか特に深い考えなしに入店する。
店内には、定番の土産ものがそろっている感じ。他にもたくさん店はあるのだが、別にあちこちまわんなくても、ここでパッと買えばそれでよさそうな気がした。独特の甘さのお菓子「ちんすこう」や、家庭でゆでて食べられる「ソーキそば」などが妹夫婦から母への土産リクエストだったようだが、今買っても荷物になるだけだよなあ、という結論に達した我々は、一通りざっと土産を見て、店を出た。ひやかしだ。
まだチェックインには早いが、とりあえずホテルに電話をしてみる。まだチェックインは出来ないが、とりあえずロビーでゆっくりできるということであった。
宿泊予定のホテル、
ホテル球陽館に向かう。
駅から徒歩3分くらいの場所にあるのだが、歩く方向を間違えて10分ほど歩いて到着した。
とりあえず、チェックインの手続きだけして、部屋に入れるようになるまで、ホテルのカフェテラスでコーヒーをすすることにした。
▲なにやら南国の植物が。
今の季節は12月半ばで、めちゃめちゃ冬のはずなのだが、沖縄は「少し過ごしやすくなってきた秋」くらいの気候だった。明らかにコートは不要で、コートを着てるような奴は観光客まるだしである。
我々はまるだしの象徴であるコートを脱ぎ、くつろいだ。
▲コーヒー
沖縄のコーヒーは、さすが沖縄のコーヒーだ、ということもなく、普通のコーヒーだった。舌にリミッターがかかっている私は、たぶん世界一のコーヒーを飲んでも「ふつうのコーヒーだった」と言ってしまいそうな気がする。ひとつ違っていたのは、「黒砂糖のかけら」が小皿に入ってついてきたことだ。
見た瞬間、黒砂糖だなあ、ということはわかっていたが、あえてすっとぼけて「これはなんですか?」と聞いてみた。「これは黒砂糖である」ということ以上の情報が得られるかも知れないからだ。
すると「黒砂糖です。お茶受けにどうぞ」ということであった。
そうか、まあわかっていたけど、ここは観光客らしくしておこうと思い「へええ~」と感心しておいた。
黒砂糖をかじると、沖縄の味がしたりすることはなく、まあ、予想通り黒砂糖の味がした。
しばらくすると、少々早いけど部屋に入れてくれるらしいので、ありがたく入れてもらうことにした。
私は今回の旅行を「
ANA楽パック」という、航空券と宿がセットになっているパッケージで予約した。3人で、二泊三日航空券付きで約10万円。こんだけの安さだと、泊まる旅館もなんというか、ビジネスホテル程度のグレードである。
部屋が空いてたとかで、一つ上のグレードを用意してもらえたようなのだが、特に広いと感動するようなこともなく、入室。
母が、床に大量の虫がいるというので見てみると、小さいアリっぽいのが這いまわっていた。フロントに電話すると、係のおばちゃんが殺虫剤を持ってやってきて、床にシュッと吹きつけ、アリ取りホイホイみたいなのも仕掛けていた。そんでもって、「このホテル、アリが多いんですよ」と言っていた。
そうか、まあ沖縄だからしょうがない。客としては少し怒った方がいいのかも知れないが、まあ、アリも退治されたようだし、いいか。
私は、先ほど土産物屋でゲットした、「さーたーあんだーぎー」を袋から出して食べてみた。
よつばと2巻で沖縄土産として登場していたお菓子である。まんじゅうのようでドーナツのようで、マンガの中では結局どんなのかよくわかんなかったのだが、ついに実物を見ることができた。
それは、おおざっぱに球状にした、ごつごつしたドーナツ、とでも言うべきものであった。
そして固い。
めちゃめちゃ力を入れて圧縮したあと揚げた、穴のあいてない昔のドーナツという感じ。単体で食うと口の中の水分を全部吸い出されてしまうので、お茶などが必須である。
▲さんぴん茶
そこは抜かりなく、自販機で「さんぴん茶」をゲットしておいた。さんぴんというと三流のチンピラの略くらいしか思いつかない。いったいどんな味がするんだろうと思って飲んでみたら、ジャスミンティーだった。沖縄で一般的にお茶と言えばジャスミンティーなんだろうか。
サーターアンダーギーを数個食べた私は、一応両親にも奨めてみたが、もちろんいらない、という反応が返ってきた。私も特に「そんなこと言わずに食べてみてよ」というほどの味ではないと思ったので、ああそう、と引き下がっておいた。
このサーターアンダーギー、店で試食用に小さく切ったやつを食べたら結構おいしかったので、丸ごと食うより小さく切ってチマチマ食う方がいいかも知れない。
うだうだしているうちに夕方6時ごろになり、腹も減った我々は国際通りに繰り出した。
そして、しばらく歩くと、「真っ白に燃え尽きたあいつ」がベンチに座っている姿を目撃してしまったのだった。
<つづく>