漫画喫茶で繰り広げられる、愛の地雷よけゲーム


 ときどき、マンガ喫茶に行く。快活クラブ、というチェーン店だ。
 私は単純に漫画を読みまくりたいだけなのだが、妻も行きたいと言ってついてくる。
 二人で入れる部屋に飲み物を持って入室、というか、パーティションで区切ってあるだけの空間だが、とにかく、入る。
 私は事前に調査してあった、おもしろそうな漫画を読みふける。最近だと、ドリフターズアイアムアヒーローテルマエ・ロマエあたりを読んだ。いずれも、人気があるっぽいけど買うほどの興味はなかった漫画だ。読んでみると、さすがに人気になっているだけあってどれも面白い。進撃の巨人も面白そうで少し読んだけど、ちょっとグロすぎてだめだったなあ。
 そんな私の横で妻はフライデーとかフラッシュとかのゴシップ雑誌を読んでいる。特に女性の裸が載っているページを嬉しそうに見ている。そんでもって、「おー、すごい・・・」「ほら、みてみて凄いよ!」とか言ってくる。
 気をつけなければいけないのは、ここで「本当だ凄い、特にこのあたりのラインがたまらないね!」などと返事すると、妻の怒りを買ってしまうということだ。
 模範解答は「ああ、すごいねー」「そうだねー」「ほんとだねー」
 時折、相手の言ったことを一部取り込んで、あいまいな相づちを打つという、一般の既婚男性が身につける基本技である。
 会話の中に、一種の踏み絵のような地雷が埋め込まれているのだ。これをうまいこと避けるというゲームがしばらく続けられる。昔はよく、地雷をふんづけて妻が怒っていたが、「興味のある話以外は適当に流す」という不真面目なソリューションにより、家庭に少しづつ平和が訪れたのである。
 話がそれたが、2時間ばかり漫画を読んで、家に帰った。また、面白そうな漫画を調べて出かけるとしよう。
 といったところで、しばらく漫画への興味は消えそうにないと感じる、40歳を越えた男性の日記を終わる。

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織田 隼人

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